一過性脳虚血発作
【いっかせいのうきょけつほっさ】
Transient Cerebral Ischemic Attack:TIA
いろいろな原因により脳の循環障害が起きますが、[1]突然発症した神経症状が、出現してから長くても24時間以内に消失し何事もなかったかのように戻ってしまう場合を一過性脳虚血発作(TIA)、[2]神経症状が24時間以上続き、3週間以内に消失する場合にはRIND(「リンド」と呼ぶ。Reversible Ischemic Neurological Deficits:可逆性虚血性神経脱落)、[3]症状が3週間以上ないし永久的に存続する場合を完成卒中(complete[d] stroke)といいます。TIAの原因としては頸動脈や椎骨(ついこつ)動脈に粥状硬化(じゅくじょうこうか:アテローム)がある時、そこにできた小さな血栓(血漿板凝集塊〈けっしょうばんぎょうしゅうかい〉)の一部がはがれて脳に飛び、血管を閉塞して症状がでます。血栓が比較的早く溶解し、脳の血流が正常に戻ると出現した症状も速やかに消失すると考えられています。TIAは危険な脳梗塞発作(大発作)の予告であるという意味で重要です。初回のTIAから5年以内に大発作が起こる確率は、20~40%と報告されています。またTIAは大きな脳梗塞の前兆のみならず、心筋梗塞の予兆ともなっていることが指摘されており、この点からもTIAの治療も早期に行う意味があります。一説によると、TIAの患者さんの1割強が、初回のTIA発作後8年以内に心筋梗塞を起こすと報告されています。
| 寺下医学事務所 (著:寺下 謙三) 「標準治療」 JLogosID : 5035030 |