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膵嚢胞と嚢胞性腫瘍
標準治療

 一般的に液体が貯まって袋状になったものを嚢胞(のうほう)と呼んでいます。膵臓がもともと分泌している膵液が貯まったものを膵嚢胞と呼び、同じように見えても腫瘍に分泌能があり、それが貯まって袋状に見えるものが嚢胞性腫瘍です。前者の膵嚢胞にも2種類あって、多くは1cm以下で(時に多発)加齢とともに出現する膵液の貯まりである貯留嚢胞と、激しい急性膵炎後に膵外に破綻した膵液が貯まった偽嚢胞(ぎのうほう)があります。偽嚢胞が炎症を起こした場合以外は、通常は症状もなく治療の対象になりません。
 膵嚢胞性腫瘍は最近になってその疾患概念が整理され、また治療方針も見当がついてきた領域です。以下には「膵嚢胞性腫瘍」につき述べます。まず分泌される液体により大きく漿液(しょうえき)性(Serous cystic tumor:SCT)と粘液性に分けられます。漿液性は嚢胞といっても微小な嚢胞で海綿状の構造からなります。粘液性にはさらにブドウの房状の形を示す膵管内乳頭状粘液性腫瘍(Intraductal papillary mucinous tumor:IPMT)と、より大型でその中に隔壁(かくへき)様の構造を持つ粘液性嚢胞性腫瘍(Mucinos cystic tumor:MCT)があります。どれも形と構造が違うので、診断上、画像の違いから区別できるようになってきました。しかし最も重要な違いはいずれも良性腫瘍とはいえ、漿液性のもののガン化は極めてまれですが、粘液性はガン化傾向を持つ点です。ただしガン化といっても普通にある膵ガンに比べ悪性度が低い、すなわち膵ガンと質がまったく違って、取ればほとんどが治ることもわかってきました。このことから手術も必要最小限のものが求められるようになり、膵縮小手術の開発のきっかけともなりました。したがって手術をするべきかどうかを含め、治療方針が最近になって議論できるようになった領域でもあります。

  

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