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平常無敵流平法
日本史の雑学事典

■4 人を傷つけてはいけないという剣術…和をもって尊しとする平常無敵流平法
 山内蓮真が始めた平常無敵流平法は、大変不思議な剣術である。
「無敵之平法も亦、定まれる法躰なし」(『平常無敵書』)と蓮真自身が語っているように、この流儀には、構えとか、型といったものが一切存在しない。それに、敵と対峙したときは自分から技を仕掛けるなと教え、まず、己の心を鏡のごとく清明にして、相手の発する気を感じ取れと諭す。さすれば、おのずから敵の所作が明らかとなり、相手の動きに変化があれば、無意識のうちに自分もそれに反応することができ、決して敗れることはないと断言するのである。
 また、「無敵之平法は、和を専らにす」(『亦或人比書授之』)とあるように、平和な状態を最上のものと考え、剣術流派でありながら、安易に刀を用いて戦うことを堅く戒めている。「戦いとは人間の欲心から発するもので、試合をして人を傷つけるなど、もってのほかだ」と言うのだ。剣術は、戦って相手を倒すために学ぶもの。にもかかわらず、人を傷つけるなとは妙な剣術である。
 こんな話がある。蓮真が、京都所司代・板倉重矩に徒士として仕えていたときのこと、重矩の家臣で槍の達人とされる男が、蓮真のうわさを耳にして、しつこく試合を迫った。そのたびに断り続けた蓮真だったが、その男の屋敷に招かれたさい、ついに立ち合うはめになる。だが、蓮真は試合中、剣も抜かず木刀も使わなかった。近くにあった薪を手に取り、わざと相手に2本先取させ、最後の3本目は足蹴りで槍を叩き落とした。決して敵を傷つけることはしなかったという。

  

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