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腹部外傷
標準治療

 外傷には、刃物などによる鋭利な外力による鋭的外傷と交通事故や転落外傷で多くみられる鈍的外傷とに分けられます。ここでは、腹部外傷の中でもとくに鈍的腹部外傷を中心に解説します。腹部には肝臓、脾臓(ひぞう)、膵臓(すいぞう)、腎臓などの実質臓器(内部がつまっている臓器)と胃、小腸、大腸などの消化管や膀胱、尿管、胆嚢(たんのう)などの管腔臓器(管状の臓器)と血管があります。鈍的腹部外傷は腹部を強く打った時に起こりますが、腹部内臓がひどく損傷されているからといって、必ずしも体の表面(体表面)に大きな傷ができるとはかぎりません。これが鈍的外傷の大きな特徴です。

1)実質臓器損傷
 肝臓や脾臓の損傷が多く、これらの実質臓器が損傷されると腹腔(ふくくう)内に出血(腹腔内出血)します。

[1]肝損傷
 肝臓は肋骨(ろっこつ)に覆われた腹腔内で最大の実質臓器です。血流が豊富な臓器なので、重症の場合には大量に腹腔内に出血し、瞬時にショック状態となります。右側の胸腹部の打撲や擦過傷(さっかしょう)あるいは右下(下位)の肋骨骨折、貧血や右上腹部痛を認めるなどの場合には肝損傷を疑います。腹腔内出血が少量の場合には外見からは判断できませんが、量が増えると腹部が膨らんできます。

[2]脾損傷
 脾臓も肝臓と同様、肋骨に覆われた、手拳大の実質臓器です。肝臓に比べて小さな臓器ですが、肝臓と同じく血流が豊富な臓器なので大量出血を起こしやすく、左側胸腹部の打撲や擦過傷、左下位肋骨骨折、貧血や左上腹部痛を認めるなどの場合には脾損傷を強く疑います。

[3]腎損傷
 腎臓は第1、2腰椎の両側に位置する後腹膜腔(腹部でも背中側の空間)に存在する実質臓器です。背面や側面からの外力で損傷されやすく、症状としては側腹部痛、腰背部痛、血尿が多くみられます。下位(第11、12)肋骨骨折や上位(第1、2)腰椎骨折に伴うことが多いのが特徴です。腎臓は強靭な筋膜(Gerota筋膜)に覆われていてそこから外へ出血することは少ないので、肝臓や脾臓に比べると大出血にいたることは少ないとされています。

2)管腔臓器損傷
 管腔臓器(管状になっている臓器:消化管、胆管、膵管、尿管、膀胱など)が損傷されると、その中に含まれている消化液や腸の内容物などが、腹腔内にもれ出します。もともと腹腔内はきれいで無菌状態になっています。そこにこのような液体や腸の内容物が出てくることによって、本来清潔なところに感染を起こし、その結果、腹膜炎(ふくまくえん)を引き起こします。鈍的外傷の際に損傷される管腔臓器の頻度としては、小腸、大腸、膀胱の順に多いとされています。ほとんどの場合に手術が必要となります。

  

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