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三蔵法師
雑学大全2

三蔵法師といえば、孫悟空、猪八戒、沙悟淨という三人の弟子を連れて、中国から天竺と呼ばれたインドまで経典を求めて旅をする物語『西遊記』で有名だ。三人の弟子をサル、ブタ、カッパに模した絵本などで、日本では子どもにもおなじみの物語だが、この著作は明時代に書かれた中国の偉大な古典である。著者とされている呉承恩が、この物語を書くときモデルにしたのが、唐時代初期に実際にインドへ旅した僧玄奘で、彼が残した『大唐西域記』が素材となったといわれる。玄奘に三蔵法師の名がつけられたのは、その呼称が当時の高僧への最大級の評価だったからだ。仏教の聖典には「経蔵」「律蔵」「論蔵」の三種類があるが、それぞれの蔵を究めた僧は「経師」「律師」「論師」と呼ばれ尊敬された。三蔵ともに精通した僧が「三蔵」であり、徳の高さはこれ以上ないといえる人物をさす敬称である。玄奘三蔵は西域から持ち帰った経典の漢語訳を果たし、それ以後の中国仏教界に新しい道を開いている。ところで、この玄奘に並び三蔵の称号を与えられた日本人の僧がいる。八〇四(延暦二三)年の遣唐船に空海や最澄とともに乗って中国に渡った法相宗の僧霊仙だ。彼は唐に渡ってから梵語を中心に勉学に励み、六年目には『大乗本生心地観経』を翻訳するメンバーの一人に選ばれる。訳経は、ただ梵語がわかるというだけでなく、仏教学識に加え、表現力や文章力も求められるという重要な役だ。この役目を無事に終えた後、霊仙は時の皇帝憲宗から三蔵の尊称を与えられている。日本人で唯一の三蔵法師である。ただ、皇帝の寵愛が激しかったため日本への帰国はかなわず、在唐二三年で没したといわれている。

  

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