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標準治療

1)誤嚥性肺炎と嫌気性菌――ダラシンの効用と誤解――
 高齢者が増加し、肺炎は市中肺炎、院内肺炎を問わず誤嚥が原因となる誤嚥性肺炎が大半を占めています。この場合、嫌気性菌も起因菌の一つとして治療する必要があります。臨床現場では嫌気性菌というとダラシンが投与される場合が圧倒的に多いのが現状です。ダラシンにも耐性嫌気性菌があり、わざわざグラム陽性菌に有効なセフェム系抗菌薬を投与しておいて、さらに嫌気性菌の関与を理由にダラシンを追加投与する意義は必ずしも高くありません。むしろダラシン単剤で有効な場合も多く、経済的なメリットもあります。また、誤嚥も含めて呼吸器感染症の主要起因菌と嫌気性菌にも有効な薬剤としてβラクタマーゼに安定化されたペニシリン製剤を単剤で投与すべきです。このときに、十分量を必要な時間間隔で投与することが大切です。たとえば、ユナシンSを6g/日で投与できれば有効性は高くなります。

2)レスピラトリーキノロン
 日本の肺炎原因菌では、肺炎球菌が最も多く、次いでインフルエンザ菌、マイコプラズマです。β‐ラクタム系薬は細菌には優れた抗菌力をもちますが、非定型病原体(マイコプラズマやクラミジア、レジオネラ)には抗菌活性を示しません。マクロライド系薬は非定型病原体には高い抗菌力を示しますが、細菌に対しては抗菌活性が高くありません。これに対し、ニューキノロン系薬は細菌、非定型病原体に高い抗菌力を示します。つまり、気道感染症のすべての病原体に有効なのは、ニューキノロン系薬です。とくに最近、多くの抗菌薬に耐性の肺炎球菌が問題となっています。このような耐性菌に対しても、ニューキノロン系薬は最も有効であり、多剤耐性肺炎球菌に対して高い抗菌力を示すジェニナック、アベロックスなどのニューキノロン系薬をレスピラトリーキノロンと呼んでいます。ただし、適応を選ばないとレスピラトリーキノロン耐性の細菌には、有効といえる薬剤はない状況なので、本当に必要なケースに限って使用する態度が重要になります。

3)尿中抗原による診断法
 尿中抗原による起因菌の迅速診断が可能になってきました。尿中肺炎球菌抗原検出キットは特別な設備や技術が不要で、患者の随時尿から短時間(15分)で抗原を検出できるため、市中肺炎の原因菌の迅速診断法として有用な検査法となる可能性が示唆されています。ただし、感染直後は陽性にならない偽陰性、また、肺炎治癒後もしばらく陽性が続く、偽陽性があることも頭に入れておく必要があります。このほか、診断が困難な、レジオネラ肺炎についても尿中レジオネラ抗原検査が確立しており、保険収載されています。
 いままで、日本でのレジオネラ肺炎の届け出は50〜70例でしたが、尿中抗原検査が行われるようになって7〜8倍に報告例が増加しました。ただし、この抗原検査は、Legionella pneumophila 血清型I型しか検出できないことを知っておく必要があります。 (寺本信嗣)

  

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