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学問のすゝめ
雑学大全2

福沢諭吉の、『西洋事情』と並ぶ当時のベストセラーが『学問のすゝめ』である。一八七二(明治五)年から四年間にわたって発行された一七冊の小冊子をまとめたもので、その冒頭に書かれた言葉はあまりにも有名だ。「天は人の上に人をつくらず、人の下に人をつくらず」として、今日、封建制度に批判の目を向けた諭吉の精神をあらわしたものとして名高い。とくに、続く「万人はみな同じ位にして、生れながらにして貴賤上下の差別なく……」という一節とあわせて、人間の平等を明言したものととらえられている。ところが、正しくは「人の上に……人の下に……といえり」と記されていて、諭吉個人の言葉としてではなく、伝聞の形で述べているものだ。福沢諭吉は中津藩の貧しい藩士の息子で、「門閥制度は親のかたき」という怒りを支えに学問の道を志している。苦学の末に成功し、人々から尊敬される地位を手に入れており、おそらく「天は……」の一節はその結果たどり着いた思想だったと思われる。「……といえり」には主語がないが、おそらく「アメリカ合衆国独立宣言」を知った諭吉が、その内容をもとに平等ということを考えた結果の思想だろうといわれている。ということは、独立宣言起草者のジェファーソンが主語になるのだろうか。ただ、諭吉の平等思想そのものは、ありのままで平等とするものではない。同書のなかには「無学な者は貧人となり下人となる」や、「無智の民ほど憐れみにくむべき者はない」といった、一読すると差別発言とも受け取れる一文も見られる。本当は、「学問によって、貴人富人になるように」という趣旨で書かれているのが本書といえる。だからこそタイトルが『学問のすゝめ』だったのである。

  

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