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海中道路
道と路がわかる事典

陸地と島を結んでいる橋は全国各地で見られ、決して珍しいものではないが、打ち寄せる波をかき分けるように、海の中に延々と伸びる道路はそうあるものではない。沖縄本島中南部の東側から、太平洋に突き出た与勝半島と、その沖に浮かぶ平安座(へんざ)島との間には、全長約五・二kmという東洋一長い海中道路がある。陸地と島が橋ではなく、道路でつながっているのである。この海域は浅く、干潮時には、与勝半島から平安座島まで歩いて渡れたというほどだったから、橋より道路の方が建設も容易だったのだろう。
平安座島には平家の落人伝説が残り、隣接する宮城島は琉球王朝時代の流刑地だったところだ。どちらも古い歴史を持つ、太平洋上に浮かぶ孤島だったが、開拓されて両島は地続きとなり、さらに海中道路で、沖縄本島ともつながってしまったのである。
一九六〇年代の高度成長期に入ると、平安座島に石油備蓄基地が建設されることになった。それに伴って、昭和四六年に沖縄本島と平安座島が、海中道路で結ばれたのだ。かつては海に浮かんでいた面積三km2足らずの自然豊かな島も、今では石油タンクが並ぶ臨海工業地帯と化してしまった。
海中道路は、高いところから海を見下ろす橋と違って、目線とほぼ同じ高さに海が広がっているので、潮の香りが優しく鼻を突く。車で走っていても、海が手に取るような近さに迫ってくるのが素晴らしいと、ドライバーには大変な人気である。海中道路の中央には、駐車場やトイレ、道路情報室などを備え、亜熱帯植物が茂るロードパークが整備されている。産業道路として建設されたはずの海中道路が、レジャースポットとして、今や沖縄っ子自慢のシンボルロードなのである。

  

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