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マルクス
雑学大全2

カール・マルクスは、一八四八年にエンゲルスとともに『共産党宣言』を著した共産主義思想家・運動家として知られるが、その根本理念をあらわした著書『資本論』が、いわゆるマルクス経済学のバイブルとして名高い。資本主義社会では、偏った資本の蓄積が労働者階級を追い詰め、やがて革命が起きるのが必然とし、社会主義社会の成立へとつながる──こう主張しているのが『資本論』だとされているが、本来の彼の経済学研究論文執筆の目的は、資本主義社会の歴史を弁証して「経済的運動法則」を解き明かすことだった。ただ、その研究を突き詰めていったために、資本主義は経済発展の歴史的段階でしかないものととらえるに至り、社会主義啓蒙の必要性に目覚めさせたのだった。こんな彼が、生まれたライン・プロイセンのトリーアを離れてボン大学に進学した頃は、経済観念などまるでないただの道楽息子だったことを示すエピソードが残っている。父親は彼が法律家になることを期待したのだが、本来の学問のほかに詩のサークルに参加したり、大学にあった同郷会の幹事になったりして遊びのほうも熱心だった。当然だが、そうしたサークルや集まりでは酒の席になる。その遊びがすぎてマルクスは借金を抱えたため、父親が清算の仕送りをし、それにお説教の手紙が添えられていたのである。手紙では金遣いの荒いことを注意され、詩作などにうつつを抜かさないよう釘をさされたにもかかわらず、翌年にベルリン大学へ移ってからも、まだ詩人になることを夢見ての浪費は続いた。当時のベルリン市会議員の年俸が八〇〇タールというところを、マルクスは一年間に七〇〇タールを浪費したというから、いくら父親が資産家であったとしても説教の一つもしたくなっただろう。後に父親の遺産を相続してからも、お金があればすぐに買い物で使い切ってしまって貧乏暮らしだったという。そんな彼の私生活での経済学は、もしかして偏った資本の社会への還元という深慮遠謀だったのかもしれない。

  

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