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チェルノブイリ
雑学大全

一九八六年四月二六日、旧ソ連ウクライナ共和国の北辺に位置するチェルノブイリで原発事故が発生した。
保守点検のために原子炉を停止して作業中だった四号炉(出力一〇〇万キロワット)で、急激な出力上昇をもたらす暴走事故が発生し、爆発した。原子炉は一瞬のうちに破壊されて、大規模な爆発と火災がおこり、職員と消防士三一人が死亡した。
大量の放射能が約一〇日間放出され続け、最初の放射能雲は白ロシア(ベラルーシ)南部を通過し、バルト海へ流れ、翌日の二七日にはスウェーデンで放射能が検出された。当初、事故の発表をしぶっていたソ連政府も、これによって事故の公表を余儀なくされた。
この年の四月末から五月上旬にかけて、放射能は北半球全域で観測され、原発事故周辺三〇キロメートル圏内から合計一三万五〇〇〇人が避難した。
さて、「チェルノブイリ」とはロシア語で「苦よもぎ」の意味だが、そのことを知った一部の人たちは「ヨハネの黙示録」の一節を思い出して戦慄した。
その一節とは次のようなものだ。
「第三の天使がラッパを吹いた。すると松明のように燃えている大きな星が、天から落ちてきて、川という川の三分の一と、その水源の上に落ちた。この星の名は『苦よもぎ』といい、水の三分の一が苦よもぎのように苦くなって、そのために多くの人が死んだ」(「ヨハネの黙示録」八章一〇、一一節)
黙示というのは「隠されたものを明らかにすること」。つまり聖書の黙示録は、言葉の裏に何かの意味を持つ神の重要な預言とされている。
チェルノブイリの原発事故では実際に河水が汚染され、その流域で栽培されていた農作物やその加工品、放牧されていた牛の肉やミルク、チーズ、バターなどの食糧への残留放射能が大きな問題となった。一九九六年のベラルーシ科学アカデミーは、汚染地域の住民に全般的な健康悪化が確認され、内分泌系や血液、造血系疾患などの発生率が共和国の平均を上回っていると発表している。
二〇〇〇年も前に書かれた「黙示録」にチェルノブイリ原発事故の様子が預言されていたかのような事実に驚き、恐れを覚えたキリスト教徒は多かったことだろう。
ちなみに苦よもぎという植物は古代から滅びの象徴とされていた。「エレミヤ書」にも苦よもぎを食べさせてエルサレムの町を滅ぼすといった預言が登場している。苦よもぎは、罪、罰、災難などの比喩に使われる植物だったのだ。

  

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