顕微鏡
顕微鏡の発明から400年以上。ミクロの世界を覗(のぞ)きたいという飽(あ)くなき欲求から、その開発は、現在もさらに進められている。
顕微鏡は16世紀末、オランダの眼鏡士によって発明された。
以来、細胞の発見など、さまざまな分野に多大な貢献(こうけん)をしてきた。
まずここで、中学校などの実験で利用される光学顕微鏡の原理を復習しよう。
光学顕微鏡とは、光で微小なものを観測する顕微鏡のことだ。
基本構造は対象の近くの対物レンズと、目の近くの接眼レンズからなる。
二つのレンズはともに凸レンズである。
凸レンズは実像と虚像(きょぞう)を作り出せるが、対物レンズの凸レンズは試料(しりょう)を拡大して実像を作る。
接眼レンズはその実像を虚像として拡大し、我々の目に見せるのだ。
このように二段階で拡大することで、1000倍くらいまで拡大できる。
現代科学でよく知られているように、小さな物質には波としての性質がある。
電子がその代表例である。
光も同様に波である。
そこで、同じ波ならば、光を電子に置き換えても顕微鏡ができるはずだ。
このような考えから作られたのが電子顕微鏡である。
光学顕微鏡は可視光(かしこう)を利用するため、その波長よりも小さなモノを見ることはできない。
しかし、電子線の波長は電圧を高くすればいくらでも短くできる。
こうして、それまで見ることのできなかったナノの世界(1000万分の1センチくらい)を映し出すことが可能になったのだ。
電子顕微鏡のしくみを見てみよう。
試料に電子線を当てると、電子線は光のように回析(かいせき)・散乱(さんらん)され、それを光学顕微鏡と同様に2段階で拡大する。
普通の光学顕微鏡では、2段目の接眼レンズは虚像を作るが、電子顕微鏡では2段目も実像を作り、それを写真に撮る。
電子顕微鏡は電磁石がレンズの役割を果たす。
これを磁界レンズと呼ぶ。
手探りでもモノを「見る」ことができる。
近年活躍している走査型(そうさがた)プローブ顕微鏡(SPM)と呼ばれる顕微鏡だ。
細い針(探針)で表面をなぞり、その動きや電気の変化によって凹凸を検知する。
これにより、原子1個のレベルまで調べられるようになっている。
【執筆・監修】
中経出版 「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術vol.2」 JLogosID : 8567157 |