洗濯機
昭和中期、洗濯機は冷蔵庫、白黒テレビとともに「三種の神器」として憧(あこが)れの的(まと)であった。そして現代、新たな進化を続けている。
国産初の噴流(ふんりゅう)式洗濯機が発売されたのは1953年(昭和28)。
大卒国家公務員の初任給が8000円に満たなかった時代に3万円近い価格だったが、大ヒットした。
それほど洗濯は、主婦にとってたいへんな仕事だったのだ。
ところで、どうして洗濯機で衣類がきれいになるのだろうか。
それは、洗剤とのコラボレーションにある。
洗濯機は水の動きで衣服の汚れを振り払って落とすので、水に溶ける汚れなら、それだけで落ちる。
問題は水に溶けない油汚れである。
そこで、洗剤の力を借りるのだ。
洗濯洗剤は界かい面めん活性剤からできている。
これは水になじむ親水基(しんすいき)となじまない疎水基(そすいき)からなる細長い分子からできている。
洗濯槽の中では、水に溶けない油汚れに疎水基を突っ込み、親水基部分を水側にする。
界面活性剤に覆われると、水に溶けない油汚れは水に溶ける玉になり、洗い流せるのである。
洗濯機は現在、次の3種の形式に大きく分けられる。
噴流式(水流式、渦巻き式ともいう)は水の豊富な日本で普及しているタイプ。
水流で洗濯する方式で、「もみ洗い」を擬もした洗い方だ。
軽くコンパクトにでき、洗面所に置くのに適しているが、水流が強いので洗濯物が絡んだりよじれたりして傷みやすい。
攪拌(かくはん)式は北米で普及したタイプで、攪拌翼と呼ばれる板を往復運動させて洗濯する方式。
「棒でかき混ぜる」洗い方を擬している。
一度にたくさんの選択ができるが、大型で重くなる。
ドラム式は欧州で普及したタイプ。
横向きのドラムが回転して洗濯する方式で、「たたき洗い」を擬している。
生地(きじ)が傷まず水量も少なくてすむという利点があるが、洗濯時間は長めだ。
また、横向きに安定させるために重い。
近年、日本でもドラム式が人気だ。
乾燥機と一体の洗濯機が売れているからだ。
従来の乾燥機と同様に、ドラム式は乾燥時に風を衣類に通しやすい。
今ではメーカーが改良を進め、各方式の欠点は克服(こくふく)されつつある。
【執筆・監修】
中経出版 「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術vol.2」 JLogosID : 8567105 |