映画『イン・ザ・ヒーロー』とスーツアクター
【えいが『いん・ざ・ひーろー』とすーつあくたー】
「スーツアクター」とは、アクション映画/ドラマなどで全身スーツやマスク、着ぐるみを着用して「生身の人間でないもの」を演じる俳優のことである。専門的な技能が必要とされるため、顔出し俳優と別に専門職としている人も多い。通常、俳優は顔を露出し、表情やセリフで演技をするものである。しかしスーツアクターはマスクや着ぐるみで顔を覆うため、表情での演技を見せることができない。このためスーツアクターは、俳優として格下の存在/下積み期間中にやむなく携わる仕事と見なされることも従前少なくなかった。しかし、日本のお家芸である特撮アクション変身ヒーローシリーズ(「ウルトラマン」「仮面ライダー」「スーパー戦隊」など)の人気の安定化・定着とファン文化の成熟に伴い、スーツアクターという縁の下の存在に注目するファンも増加した。2014年9月、このスーツアクターという職業に初めてスポットを当てた映画『イン・ザ・ヒーロー』が公開される。この映画に主演する唐沢寿明は今でこそ日本を代表する男優の一人であるが、若手の頃に実際にスーツアクター経験があり、またそれを「自分の出発点」として積極的に開示することで知られてもいる。唐沢演ずる本城渉は、アクションスターを夢見ながらも25年間スーツアクターを続けてきたベテランという役柄であり、唐沢がもしスター俳優になっていなかったらという「IF(もしも)」を想像させるキャスティングとなっている。ちなみに唐沢は現在50歳である。唐沢の相手役となる若手アイドル男優、一ノ瀬リョウを演じるのは福士蒼汰。福士は2011年から2012年にかけて一年間放送された特撮アクション変身ヒーロードラマ「仮面ライダーフォーゼ」にて主役を務めた経験がある。「~フォーゼ」はその名のとおり、日本の代表的特撮アクション変身ヒーローである仮面ライダーシリーズの一作であり、ここで福士は主役の変身ヒーロー「仮面ライダーフォーゼ」に変身する不良高校生、如月弦太朗を演じた。仮面ライダーシリーズでは伝統的に、専門のスーツアクターが仮面ライダーのスーツとマスクをかぶって変身後のアクションを演じる(初代仮面ライダーを演じた藤岡弘、は当初変身後も自分で演じていたが、これは例外)。このため、変身前の役を演じる顔出し俳優と、仮面ライダーとして変身後のアクションをするスーツアクターによる「二人一役」が要求される。特に、2000年の「仮面ライダークウガ」から続いている「平成仮面ライダーシリーズ」は、昭和時代のシリーズと較べ作品のドラマ性が上がっており、単純な勧善懲悪ではなく、一年間続く大河ドラマのなかで変遷をたどる複雑な役を表現し切らなければならない。このため、変身前の俳優と変身後のスーツアクターとの演技に極めて高いシンクロナイズが要求・発揮されるようになっている。福士蒼汰は「~フォーゼ」において高岩成二というベテランスーツアクターと二人一役を務め上げており、『イン・ザ・ヒーロー』における一ノ瀬リョウ役は、もし福士が「~フォーゼ」を経験していなかったら~という、「IF」を想像させるものになっている(一ノ瀬は本城に「スーツアクターって日陰っすよね」と言い放つ傲岸不遜な人気男優という設定)。また、主題歌を担当するベテランロック歌手、吉川晃司は平成仮面ライダー映画との縁が深い。「仮面ライダーW」の映画では、主人公の師匠である「仮面ライダースカル」に変身する鳴海荘吉を二作にわたって演じた他、「仮面ライダーカブト」の映画では主題歌を提供している。また自身のコンサートで仮面ライダースカルのスーツを着て登場したこともある。
JLogos編集部
| Ea,Inc. (著:JLogos編集部) 「JLogos」 JLogosID : 12665194 |