リンパ浮腫
【りんぱふしゅ】
Lymphedema
リンパ系の働きは、[1]毛細血管から組織間質にもれ出たタンパクなどの高分子物質を再び血流中に回収する組織間液の回収機能、[2]リンパ球やリンパ節を介して生体を感染や外部から侵入した抗原物質、腫瘍(しゅよう)の転移から守る生体の防御機構に大別できます。リンパ浮腫はこのうち[1]の機能に障害が起こり、つまりリンパ系の輸送機能に障害が起こり組織間質内に血漿(けっしょう)タンパクや水分が貯留した状態をいい、四肢(手足)に多くみられます。リンパ管の先天性発育不全などの原因の不明な原発性(1次性)と、原因の明らかな続発性(2次性)に分けられ、わが国では子宮ガンや乳ガンの後に起こる続発性例が多く、欧米では原発性例が圧倒的に多くみられます。
また、病期を分ける分類があります。I期は指で圧迫することにより圧迫の痕(あと)が残り、横になることにより浮腫の寛解(かんかい)をみる可逆性の時期、II期は指で圧迫しても圧迫の痕ができにくくなり、横になるだけではむくみの軽減もみられなくなり自然のままでは軽快しない時期、III期はさらに時間が経って皮膚の角質増殖が進み、象皮病と呼ばれる時期、と分けられます。
原発性のリンパ浮腫は、先天的にリンパ管が欠損したり、数が少なかったり、細かったりしてリンパの輸送障害が生じます。続発性リンパ浮腫では、ガン手術時に腋窩(えきか:腋の下)や骨盤腔内のリンパ節を取り除いたり、放射線療法後のリンパ管閉塞などでリンパの輸送障害が生じ、リンパ浮腫の発生をみます。なお、リンパ浮腫ができた手や足は大きく重く、動かしにくいことがあっても、運動障害や麻痺を伴うことはありません。
| 寺下医学事務所 (著:寺下 謙三) 「標準治療」 JLogosID : 5035082 |