自然主義
【しぜんしゅぎ】
【1】〔哲〕自然以外には実在を認めず、精神をも自然の産物とし、科学的方法で説明しようとする立場。【2】〔倫理〕「善い」「正しい」などの道徳的価値を、人間の本能、欲望、素質などの自然的要素にもとづいて説明しようとする立場。【3】〔文学〕【ア】生物学的な目で社会的事実を見ようとする文学上の立場。【イ】人間の生活を苦悩に耐えて直視し、性格・心理をありのままに描こうとする文学上の立場。{参考}【3】の【ア】は十九世紀フランスのゾラたちの考え方。人間を遺伝と環境に支配されるものと見、科学的に認識しようとした。【3】の【イ】は、明治後期に書かれた田山花袋(たやまかたい)「蒲団(ふとん)」、島崎藤村(しまざきとうそん)「破戒(はかい)」をはじめとする自然主義文学の考え方。日本の自然主義は、無解決、無理想の方向に進んでいき、やがて私小説の盛行をみた。ほか、代表作家に岩野泡鳴(いわのほうめい)・島村抱月(しまむらほうげつ)・徳田秋声(とくだしゆうせい)・正宗白鳥(まさむねはくちよう)らがいる。↓私小説・心境小説・写実主義
| ベネッセコーポレーション (著:樺島忠夫/植垣節也/曽田文雄/佐竹秀雄) 「福武国語辞典」 JLogosID : 705076520 |