海の珍現象
【うみのちんげんしょう】
【道と路がわかる事典】 5章 いろいろな道 >
沖縄の海中道路は、陸地と島を人工的につないだが、自然の力、すなわち川の上流から運ばれた土砂によって、島が陸続きになったという例もある。陸繋(りくけい)島と呼ばれるもので、男鹿半島や江の島、潮岬、志賀島など全国各地で見られる。また、突然海の中に道が現れ、陸地と島がつながるという珍しい現象の起こる島がある。
その名も珍島(チンド)、韓国の南西端にある小さな島だ。本土と珍島大橋で結ばれているため、島という感じはしない。かつては、思想犯の流刑地だったところで、当時の史蹟も残っているが訪れる人は少なく、田畑の広がるのどかな島である。
その静かな島に、一年に一度だけ大異変が起きる。珍島と、その南東沖に浮かぶ茅島との間の海水を割るようにして、道が出現するのである。そして、珍島と茅島との間約二kmが地続きになる。毎年四、五月頃の大潮のときに見られる珍現象で、この世にも不思議な現象を一目見ようと、国内はもとより、外国からも大勢の観光客が押し寄せる。そして、潮が引くのを待って大勢の人々が一斉に、茅島を目指して歩きはじめるのである。いつ波が打ち寄せるかもしれぬスリル、まさしく“モーゼの奇跡”を思い起させる怪奇な光景である。
スケールは小さいが、日本でもこれに似た現象の見られるところがある。最も有名なのが、伊豆西海岸最大の観光地の堂ヶ島だ。大潮になると、堂ヶ島とその沖に浮かぶ三四郎島が地続きになり、その島まで歩いて渡ることができる。海の上に道ができるのだ。これをトンボロ現象といい、堂ヶ島のほかにも全国各地で見られる。珍島のように、年に数度だけしか見られないのと違って、大潮のたびに現れる現象である。
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【この辞典の書籍版説明】
「道と路がわかる事典」浅井 建爾 |
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道を切り口に日本を旅する楽しみに出会う本。身の回りの生活道路の不思議から、古道の歴史、国道や高速道路、橋やトンネル、乗り物まで道と路に関する知識が満載。 |
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