並木①
【なみき】
【道と路がわかる事典】 4章 道の由来と文化 >
道路の両側に並木を植えることは、古代から続く日本の文化だといえよう。樹木を植えることによって日陰をつくり、旅人たちに休息の場を与えていたのである。炎天下を道行く人にとって、涼しい木陰がどれほど疲れを癒してくれることかしれない。木の下で雨をしのぐこともでき、吹きすさぶ風から身を守ることもできた。並木は心強い旅の味方だったのだ。
ところで、並木の歴史はずいぶん古い。七五九年、東大寺の僧、普照法師の請願によって植樹されたのが、記録上に残る日本で最初の並木だといわれている。朝廷に調物などを運ぶために、太陽が照りつけるなか、重い荷物を背負って歩く百姓たちの姿を見かねて、並木を植えることを思い立った。普照は中国に留学した際、木陰で人々が休息している光景を見て、それがヒントになったのだといわれる。松や杉ではなく果樹を植えたのは、果実が飢えと喉の渇きを潤すのに役立つからであった。
戦国時代は並木の整備どころではなかったが、織田信長は街道に並木を植えさせ、この頃から並木が整備されるようになった。だが、本格的に並木が植えられるようになったのは、江戸時代になってからで、五街道など主要な幹線道には見事な並木が連なっていた。
明治に入ると、並木の尊さが忘れ去られたのか、次々と伐採され、古い並木の多くを失ってしまった。しかし、失って初めてその良さに気がついたのか、現代では再び並木が見直され、街路樹が盛んに植えられるようになった。だが、現代の並木は道行く人に木陰を提供するために植えられるわけではなく、街の美観と環境に配慮したものであるところに、かっての並木との大きな違いがある。
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【この辞典の書籍版説明】
「道と路がわかる事典」浅井 建爾 |
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道を切り口に日本を旅する楽しみに出会う本。身の回りの生活道路の不思議から、古道の歴史、国道や高速道路、橋やトンネル、乗り物まで道と路に関する知識が満載。 |
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