弁証法
【べんしょうほう】
【東洋医学のしくみ】 3章 「証」による診断と治療 >
◆弁証法とその種類
この章では、東洋医学の生理観と病理観をもとにして、具体的な診断の方法と診断に基づく治療方法を説明していきます。
東洋医学では、病気がどういう種類かということを「病証」または単に「証」と呼びます。その証を見きわめることを「弁証」、弁証の結果から治療方法を決めることを「論治(ろんじ)」と呼び、両方をくっつけて「弁証論治」という言葉を使う場合もあります。
弁証は現代医学の診断に当たるもので、その方法が弁証法となります。弁証法にはいくつか種類がありますが、主なものはつぎの4つです。
①病因弁証…主に外感(体の外から入る病邪)が原因になって起こる症状に対して、病因が何かという観点からアプローチする
②臓腑弁証…五臓六腑のどれに不具合が生じているのかを見きわめることからアプローチする
③気血津液弁証…気血津液の失調から見きわめようとする
④八綱(はっこう)弁証…虚か実か、寒か熱といった症状の性質からアプローチしていく
診断に際してすべての方法を使うというわけではなく、患者の様子から判断してケースバイケースで各方法を使い分けていきます。そして最終的に「病因」のほかに、どの部分で病気が起こっているかという「病位」、「病理物質」、「病気の性質」の4点を確定して、治療方法決定の「論治」へつなげていくのです。
◆2対×4組で見ていく八綱弁証
弁証法の中でもっとも重要とされているのが、病気の性質の見きわめをメインにする八綱弁証です。専門的に東洋医学を学ぶ場合でも、まずこの八綱弁証を理解することが先決だといわれています。
八綱の「八」は病気の性質を示す基本的な項目の数で、「陰と陽」「表と裏」「虚と実」「寒と熱」の8つをいいます。4組に分かれていることからもわかるように、8つのどれかを見ていくのではなく、表証か裏証か(表裏弁証)、虚証か実証か(虚実弁証)、寒証か熱証か(寒熱弁証)というように、対立する性質のどちらなのかを判断して「虚実は実、寒熱は熱だから実熱証だ」といった診断を下すのです。
◆時間や患者によっても違う「証」
東洋医学で診断される「証」と、現代医学の診断による「病名」とは似ているようで少しニュアンスが違っています。
現代医学で「○○病」と診断されれば、その病名によって治療方法が決まり、処方される薬も決まってきます。○○病の患者であれば基本的にみな同じです。
ところが「証」は違って、まず分類が細かくなります。これは弁証法を駆使して、症状をいろいろな角度から見ようとするからです。たとえば「感冒」と呼ぶいわゆるカゼを例に取ると、病因弁証によって実に7種類にも分けられ、それぞれ処方される漢方薬も異なってきます。
さらに「証」は時間の経過によって変化することもあるので、一人の患者に対する治療方法が途中で変更されることも珍しくありません。つまり「証」は病名ではなく、ある患者にあるときに表れている病気の状態を示す言葉といった方が適切かもしれません。
「証」が現代医学の何に当たるかは別にして、生理観・病理観の現代医学との違いが「証」にもはっきりと反映されているということです。
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