室町 砂場
【むろまち すなば】
【東京-五つ星の蕎麦】 伝統の味を守る歴史ある名店11軒 > 中央区
暖簾分けで独立し、高輪の魚籃坂あたりにあったのが慶応年間(1865~68)のこと。だが、数年後の明治2年(1869)に日本橋に移転し、この年を創業の年としている。店は当初、現在地の北側100mほどのところにあり、木造2階建てだったという。ここに移ったのは昭和49年(1974)。今は鉄筋4階建てのビルだが、純和風の店内は1階が坪庭を望むテーブル席、2階は個室にもなる座敷になっている。
そばは、一番粉だけを使った白い更科粉を卵でつないだざると、主に二番粉で打つやや黒めのもりの2種類が基本。
室町砂場は「天もり」発祥の店としても知られている。天もりとは、冷たいそばを、天ぷら入りの温かいつゆで食べるつけそばのこと。この天もりが考案されたのは、昭和25~26年頃だという。当時は、店の営業が終わると従業員を交えて、そばを食べる習慣があった。つゆだけでは物足りないと、残った揚げ玉を入れて食べたところ、これが口に合い、これをヒントに揚げ玉を見栄えのいい天ぷらに変えて出したのが天もりの始まりだという。夏期に売れ行きが伸び悩む天ぷらそばの需要を挽回するほどヒットし、今では看板メニューに定着している。
老舗といえども、決して古さだけを守り通しているわけではない。もちろん先代、先々代の意思を受け継ぎながら新しいメニューの開発にも熱心に取り組んでいる。五代目の当主・村松毅さんは日本料理の修業を重ね、そば会席をメニューに加えた。平日の夕方のみの予約制で、献立は季節の味をたっぷりと盛り込んだ内容だ。
室町砂場の楽しみのひとつにオリジナルマッチがある。絵柄は毎月、季節に因んだ草花や食べ物、行事に変わる。例えば正月は羽子板の羽根、2月は鬼、5月はイチゴ、12月はスイセンなど。小さなキャンバスだが、目で味わう日本の歳時記として人気が高く、毎月のようにこのマッチを目的にそばを食べにくる客も多いという。
店の入り口は落ち着いた構えで「砂場」の看板が風格がある。昼時ともなると客で一杯になり広い店内がたちまち満席となる超人気店である。
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【この辞典の書籍版説明】
「東京 五つ星の蕎麦」見田盛夫/選 |
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並木藪蕎麦、巴町砂場、神田まつやなど伝統の技が味わえる名代の老舗から、進化し洗練された蕎麦でたちまち有名となった新鋭店まで、都内と近県の118の名店を料理批評家・見田盛夫が厳選。蕎麦の基礎知識や全国の名店217軒の情報も付いた、蕎麦好きのバイブル。 |
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東京-五つ星の蕎麦[link] |