キリスト②
【東京雑学研究会編】
【雑学大全】 社会 > 宗教
新約聖書の「マタイによる福音書」によると、イエス・キリストがエルサレムで誕生したとき、夜空には大きな星が光り輝いたという。昔から王者や救世主あるいは聖者が出現したとき、こういった現象が起こったと伝えられている。
救世主を探しに来ていた東方の三人の博士は、星を頼りにエルサレムをたずね、馬小屋で聖母マリアに抱かれたイエス・キリストに出会った。博士たちは感激のあまり地面にひれ伏して拝み、宝の箱を開けて、黄金と没薬と乳香を捧げたのだ。
一説によるとイエス・キリストの生誕の贈り物にちなんで、クリスマスプレゼントの風習が生まれたといわれている。
この場合、黄金は現世の王者、没薬は救世主、乳香は神をそれぞれ象徴している。
黄金が重宝されるのは言うまでもない。没薬は霊薬として万病にきく秘薬だった。そして、乳香はその芳香がかぐわしいため、神の前で祈るときの聖なる香料とされていたのだ。
この乳香とは、どんなものだったのだろうか?
古代エジプトでも国王や貴族などが亡くなってミイラにされた後、死者の魂を天上に送るためにこの乳香を焚いて荘厳な儀式を執り行っていた。乳香はオリバナムともいい、カンラン科のニュウコウジュからとれる芳香ゴム樹脂か、あるいは地中海原産のウルシ科の木から取れる樹脂のことをいう。
どちらも幹に切り傷をつけて流れ出た樹脂が空気に触れて凝固したもの。色は黄色、緑、黄褐色のものがある。もともと透明だけれど、こすれると粉が出て白色半透明になる。幹から流れ出る乳白色の液が乳のようだったから乳香の名前がついた。
さて、イエス・キリストは三〇歳頃、家を出てヨルダン川でバプテスマのヨハネによる洗礼を受け、三三歳で十字架にかけられて処刑された。処刑された後のイエス・キリストの身体に女性たちが聖油を注いで浄めたというが、この聖油にも乳香と没薬が含まれていた。
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