ゴルフボール
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【雑学科学読本 身のまわりのモノの技術vol.2】 実用アイテムに見るモノの技術 >
ゴルフは年齢を問わず、スポーツ界の華(はな)といえる。近年は、若手プロゴルファーの活躍がスポーツニュースの一面をよく飾っている。さて、ゴルフボールのくぼみ(ディンプル)を見てみると、ブランドによって模様や深さが異なることに気付く。たかがくぼみと侮(あなど)ってはいけない。この違いには大きな理由があるのだ。ディンプルの効果としては、大きく二つのことが挙げられる。「揚力(ようりょく)の増加」と「空気抵抗の軽減」である。まず「揚力の増加」を見てみよう。球技一般にいえることだが、ボールを打つときには回転(スピン)をかけるのが普通だ。ボールを曲げたい、遠くに飛ばしたいなど、都合に応じてスピンをかける。そのとき、表面に凹凸があれば、それだけ周囲の空気との抵抗が増え、スピンの効果が増大する。ではここで、スピンをかけて揚力が得られるしくみを考えてみよう。バックスピンをかけると、ボールの上の気流は速く、下は遅い。気流は速いと気圧が低くなり、遅いと高くなる性質がある(ベルヌーイの法則と呼ぶ)。したがって、ボールには揚力が働く。ディンプルがあると、上下の気流のスピードの差は平らな球よりも大きいため、それだけ強い揚力を受け、ボールは遠くに飛ぶことになる。打球の軌跡(きせき)は初速、打出角、スピンの三つで決定される。これを飛びの三要素と呼ぶ。ディンプルはこの三つ目に関与するのだ。次に「空気抵抗の軽減」の効果について見てみよう。物体は空気中を運動するときに抵抗力を受けるが、その最大の原因はカルマン渦(うず)である。空気の流れが物体から剥(は)がれて渦ができ、この渦が物体の動きを止めようとするのだ。ディンプルがあると、空気の流れがボール表面から剥がれるのを防ぎ、カルマン渦の発生を抑えられるため、ボールは遠くに飛ぶのである。このように、ディンプルの大小や浅深はボールの飛び方を左右する。そこで、ボールメーカーはさまざまな研究からその模様や形を定めているのだ。
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【この辞典の書籍版説明】
「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術vol.2」涌井良幸・涌井貞美 |
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大好評を得た既刊『身のまわりのモノの技術』の待望の続編! 「日頃よく使っているモノ」あるいは「意識しなかったけど、じつは身近にあるモノ」などに活かされている“技術・しくみ"について、豊富な図版をまじえながらシンプルに解説する本。 モノの技術やしくみが少しでもわかると、そのモノへの愛着と興味が増し、何気なく手にしたり触れたりするモノが、より身近になります。 本書を通じて、「科学技術の結晶」たちのスゴ技を、とくと堪能してください! |
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雑学科学読本 身のまわりのモノの技術vol.2[link] |