春分の日
【しゅんぶんのひ】
【暦の雑学事典】 1章 暦の常識・非常識 >
◆二〇〇〇年の春分の日付は?
こんなエピソードがある。ある書籍編集者が翌年のカレンダーの制作を依頼された。編集者は年号も曜日も閏日の有無も、国民の祝日もしっかり校正したが、印刷が終わったあと重大なミスが発見されて、カレンダーはすべて廃棄処分となった。春分の日の日付が違っていたからだ。この編集者は春分の日は他の国民の祝日と同様に、固定した日付だと思い込み、前年のカレンダーをもとに校正していたのである。
しかし、辞書をめくると、春分の日は「三月二一日頃」とある。毎年三月二一日とはかぎらず、三月二〇日になる年もあるのだ。たとえば一九九八年、九九年の春分の日は三月二一日だったが、九七年は三月二〇日であった。二〇〇〇年、二〇〇一年は再び三月二〇日となる。このずれはどうして起こるのか。
太陽が春分点を通過するときが春分である。この基準は太陽観測によって、しっかりと把握できる。太陽年は三六五・二四二二日なので、暦年を三六五日とすると約四分の一日のずれが生じるが、これは四年に一度の閏年を設けることで修正できる(ユリウス暦)。グレゴリオ暦では年数(西暦)が一〇〇の倍数である場合は平年、ただし四〇〇の倍数である場合は閏年とする規則を追加して、太陽暦はさらに精緻なものとなった。このように、春分点が太陽年の基準であるにもかかわらず、春分の日が一定していないのはなぜか。◆太陽の春分点通過時刻が午前零時近辺にあるときが問題
グレゴリオ暦は一月一日午前零時を年初とする。一太陽年は三六五・二四二二日、時間で表わすと三六五日五時間四九分なので、一年間で五時間四九分ずつ暦年とのずれが生じる。二年間では一一時間三八分、三年間では一七時間二七分、四年間では二三時間一六分となるが、四年目には二月二九日の閏日が設けられるので、日付が一日もどされる。しかし、ずれは二四時間以内とはいえ、午前零時を超えてずれるときは日付が変わってしまう。このため、春分の日が年によって異なるようなことも起こるのである。この規則に従うだけなら、太陽が春分点を通過する時刻を正確に予測でき、一〇〇年、二〇〇年先の春分の日も事前に確定できるはずである。ところが、地球は諸惑星や月の引力の影響を受けて、公転軌道も自転軸も微妙にふらついており、太陽の春分点の通過時刻は、一〇分ほどのバラツキが生じる。春分の日は、太陽の春分点の通過時刻(天文学的な春分)を含む日のことだから、通過時刻が午前零時(中央標準時)の近辺にあるとき、どちらの日になるか何年も前から予測するのは困難なのである。
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「暦の雑学事典」吉岡 安之 |
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