風邪
【かぜ】
【東洋医学のしくみ】 休憩室(コラム) >
鍼灸学校などで東洋医学を学び始めた学生から、「今まではあまり気にならなかった身の回りのことに対して、自分がずいぶん意識するようになっていることに気づいて驚いた」ということをよく聞きます。ある生徒は、吹いてくる「カゼ」を意識するようになったと言いました。
彼が最初にカゼを意識したのは、電車に乗ったとたんに頭の真上からクーラーの冷風が吹き付けてきたときでした。少し汗ばんでいたので、それまでであれば涼しくて気持ちがよいと思ったでしょうが、そのときは「風邪(ふうじゃ)が来たな」と感じたというのです。ちょうど風邪が寒邪などのほかの病邪を引きつれてくることや、関節の屈伸を失調させたり、痙攣や麻痺などの原因にもなることなどを学んだばかりだったので、「これはヤバい」という気持ちになったそうです。彼は、自分がよく頭痛を起こしたり肩がこったりするのも、寒がりで熱がりなので冷暖房を強く設定して勉強や作業をしていたために、知らないところで風邪を受けたのが原因だったのではないかなど、今さらながら思い当たることが多かったとのことです。
政治家に比較的多い病気に、顔面神経麻痺があります。これは、東洋医学的な発病のメカニズムでいうと、選挙活動で疲れがたまってきたところに、車の窓から顏を半分出しながら走り回ると、吹き付けるカゼが風邪となって顔面の経絡を侵し、麻痺が発症するといえます。また、汗をかいたところにカゼに当たると、風邪が寒邪を伴って侵入し、体の表面や筋肉を冷やすため、感冒を発症したり、筋肉を痛めて五十肩などになってしまうことも多いのです。
風邪以外にも病邪を知ることは、体調を維持して生活していくうえで重要なことです。たとえば、「毎年梅雨どきは身体が重だるくてつらい」という人に相談を受けたことがあります。湿邪には「重い」「体内の湿気と相互に影響しあう」という性質があるため、晩酌で飲んでいるビールの量をこの季節だけ半分に減らすようアドバイスしたところ、しばらくして、やってみたら体調がいいと喜びの連絡がありました。
いかに文明が進んだとはいえ、自然の影響を受けずに生きていくことはできません。みなさんにも、健康維持を考えるうえで、病邪の性質を知り、人体に与える自然の法則を学ぶことをおすすめします。
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【この辞典の書籍版説明】
「東洋医学のしくみ事典」関口善太 |
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ともすれば怪しげなイメージがあり、本来の療法とは根拠の薄い健康本が多い中、東洋医学の病理観から気血津液、証などを正しく教える入門書。漢方薬・経絡マッサージなどの実用面もやさしく解説。医療関係者ほか、健康を本気で考える人にぜひ読んで欲しい一冊。 |
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