臓腑の同調
【ぞうふのどうちょう】
【東洋医学のしくみ】 3章 「証」による診断と治療 >
◆排尿のトラブルを肺で治療する
体内の液体をいったん集めて必要な成分を再利用に回すとともに、不要な水分は尿にして排泄する――、この機能を担っている臓器は、現代医学では腎臓、東洋医学でも腎です。
しかし、腎機能が低下して排尿障害が起こった場合は、その治療に双方の医学の違いが見られます。
現代医学では利尿効果のある薬を使ったり、状態がひどいときは人工透析をするなど、主に腎臓そのものへの働きかけをします。ところが、東洋医学では腎ではなく肺への働きかけによって治療するという、現代医学では考えられない治療をすることもあります。
東洋医学的にいえば、体内の水液は腎と肺との協調でコントロールされていると見ます。肺には水液を全身へ送り出すと同時に、不要な水液を腎へ下降させる機能があります。腎は、その水液を再活用できるものと不要なものに分けて、吸収と排泄に回す機能を担います。ですから、肺の機能を高めて腎へ水液をしっかり下降させれば、尿の出も回復すると考えるのです。
◆10組の五臓同士の協調
2つの臓器が協調して特定の生理活動をコントロールしているという組合せはほかにも数多くあります。
まず五臓六腑の五臓では、心・肺、脾・肝・腎のそれぞれが、他の4臓器と協調する働きの組合せは10組になります。
各組合せの協調による生理活動は一つとは限らないのですが、相関関係がはっきりしているので、どういう不調が起こればどういう症状が出るかはわかっています。それによって証を決定し、2つの臓器を同時に治療したり、腎と肺の例のように、ある臓器に関連して発症している症状を別の臓器へアプローチすることで、間接的に治療したりするのです。
◆病の反復がもたらす臓と腑の関係
次に、臓と腑の関係について見ていきます。
2章で触れたように、臓と腑は生理関係で相互に協調しています。くわしい説明は省略しますが、それぞれ対応する臓腑が一定の関係(陰陽表裏の関係=八綱弁証の表裏とは別)で経絡でつながっているからです。
臓と腑では、腑の方が最初に病邪に襲われやすく、とくに実証の病気を起こしやすいのです。この段階では実証ですから一過性なのですが、これが反復によって慢性化すると、腑の働きを支えている臓にまで浸透し、病の本質となってしまいます。
たとえば、食べ過ぎでお腹が痛くなったというのは、腑の一つである胃が病邪に侵された状態です。ここでは、胃薬を飲んだり胃のツボに針を打てば治るのですが、これが毎日のように繰り返されると、胃だけでなく、胃と関係する臓である脾まで病が浸透し慢性化してしまいます。こうなると胃だけでなく、脾の治療をする必要が出てきます。
また「治病求本」で触れた膀胱炎が慢性化した例は、腑の膀胱と臓の腎の関係を表したものです。現代医学では、膀胱に菌がいなくなれば検査値として現れませんから、気分の悪さを和らげるために安定剤を出したりしますが、東洋医学では反復によって大もとである腎にまで病が及んだと考え、腎のための薬を使うのです。
胃と脾、腎と膀胱、肝と胆あたりは想像できますが、心と小腸、肺と大腸の関係となると、現代医学の発想からはわかりにくいかもしれません。
このように、臓腑の相互メカニズムで病気をとらえ、治療を施すというのが東洋医学の特徴です。
■虚弱体質のタイプ①…気虚体質
■虚弱体質のタイプ②…血虚体質
■虚弱体質のタイプ③…陽虚体質
■虚弱体質のタイプ④…陰虚体質
■代謝障害体質のタイプ①…気滞体質
■代謝障害体質のタイプ②…お血体質
■代謝障害体質のタイプ③…痰湿体質
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【この辞典の書籍版説明】
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