体の基本物質
【からだのきほんぶっしつ】
【東洋医学のしくみ】 2章 東洋医学ではこう考える >
◆生命を維持するための3要素
中国哲学をベースにした東洋医学の全体の生理観を、ここから少しくわしく見ていきましょう。まずは、おおまかな体全体のシステムについて。
人も動物も、食べ物から得る栄養と、空気から得る酸素を全身にめぐらせて生命を維持しています。これを東洋医学の見方でいうと、食べ物が「水穀」、栄養が「水穀の精微」、酸素が「自然界の清気」となります。
現代医学と東洋医学が同じなのは、栄養と酸素で生きているというところまでで、それらをどう使っているかになると、大きく違ってきます。
現代医学だと、食べ物からの栄養素が内臓や筋肉、骨格、血液などを作り、酸素と反応して運動エネルギーや熱を生み出すと考えます。これが東洋医学では、水穀の精微と自然界の清気が、体の基本物質である「気」「血(けつ)」「津液(しんえき)」を生み、気・血・津液が骨や肉になると同時にエネルギー源にもなっていると考えるのです。
では「気・血・津液」とはいったい何なのか、とくに目に見えない気などどうやってとらえるのかという疑問が当然出てくるでしょう。ここではそういう疑問自体が東洋医学を理解する邪魔になることを先に説明します。
「気・血・津液は現代医学でいう何に当たるのか?」と3つを完全に分けて「~は~だ」と決めつけない方がいいのです。なぜなら、「天人相応」を根底に、人間の体全部を一つのものとして見ることに東洋医学の特徴があるからです。
人体はエネルギーを持った一つの物質だと考え、そういう視点で体のしくみを見ていったときに、ある現象は「気」の有無ととらえ、またあるものは「血」、また別の場合には「津液」という形でとらえていくのです。ですから「血」は血液とイコールではなく、津液も何かの体液を指すわけではありません。
◆気が血に、血が気になることも
さらに場合によって、血は気の中の何かに相当することもあります。
中国思想の源流にある「陰陽」という宇宙観を人体に当てはめると、気は「陽」で血・津液は「陰」になります。ところが陰と陽はときに入れ替わり、血が気になったり気が血になったりすることもあります。アバウトな話に思えても、これが東洋医学の基本なのです。
物質性と運動性を持った人体を構成しているものを、ケースバイケースで気とか血とか津液という形でとらえることを大前提にして、血は現代医学の血液に近く、津液は体液に近い、しかしイコールではないと考えたらいいでしょう。
現代医学的なものの見方に慣れてしまうと、目に見えるものを徹底的に追求していくのがベストと考えてしまいます。東洋医学のしくみを理解するには、それをやめることからスタートしないといけません。つまり、「現代医学の○○は東洋医学の●●」というように、必ずしも1対1で考えられるものではないのです。現代医学と違うからこそ、違う治療ができるのです。
data-ad-slot値が不明なので広告を表示できません。
【関連コンテンツ】
広告を表示できません。
【この辞典の書籍版説明】
「東洋医学のしくみ事典」関口善太 |
|
ともすれば怪しげなイメージがあり、本来の療法とは根拠の薄い健康本が多い中、東洋医学の病理観から気血津液、証などを正しく教える入門書。漢方薬・経絡マッサージなどの実用面もやさしく解説。医療関係者ほか、健康を本気で考える人にぜひ読んで欲しい一冊。 |
|
出版社:
東洋医学のしくみ[link] |