レトルトカレー
【れとるとかれー】
【雑学大全2】 生活 > 食べ物
一九九二(平成四)年九月、日本人初の宇宙飛行士となった毛利衛氏を乗せたスペースシャトル「エンデバー号」が宇宙へと飛び立った。毛利氏は、とあるインタビューで宇宙食について語っている。そのなかで、宇宙での食事でいちばんおいしかったものとして挙げたのがカレーだった。毛利氏が機内に持ち込んだ日本食は、餅、味噌汁や吸い物、ご飯、赤飯、海苔、豆腐、梅干、桜湯、茶、醤油、そしてレトルトカレーだったという。レトルト食品は、加工済みの食品をアルミや合成樹脂など機密性の高い袋や容器に入れて密封し、高圧高温で殺菌、密封したものをさす。いまでこそ手軽で保存も利く便利な食品として家庭に定着しているが、このレトルト食品の技術はもともと、NASAのアポロ計画の一環として研究がはじめられたものだった。そして、世界初のレトルト食品はというと、なんと日本生まれ。一九六八(昭和四三)年に発売され、現在でも日本を代表するレトルト食品の一つといえる、大塚食品工業(現・大塚食品)の「ボンカレー」である。大塚化学は、一九六四(昭和三九)年、スパイスや即席カレールーのメーカーを傘下におさめ、大塚食品工業とした。当時は、大手の独占状態にあった即席カレールー市場での勝負は非常に難しい状態だった。そんなとき、アメリカの雑誌「モダンパッケージ」に掲載されていた、フィルム容器を使って宇宙食をつくるという論文と出会った。これがレトルトカレーを生み出すきっかけになったという。しかし、当初のレトルトカレーは、透明の袋入りで遮光性に問題があったことと、袋のなかの空気をうまく抜くことが難しく、カレーが酸化してしまうという欠点があった。その後さらに研究を重ねた結果、袋は遮光性の高いアルミ箔をサンドイッチにした三層構造に改良され、レトルトカレーを調理する釜も、加熱、加圧、殺菌にすぐれた専用のものが開発された。こうして、保存にすぐれたレトルトカレーが誕生したのである。その後相次いでメーカーが参入し現在に至っている。宇宙食用に研究が進められた技術を生かして生まれた世界初のレトルト食品であるレトルトカレーが、日本人宇宙飛行士の手で宇宙へ飛び立ったのである。そしてエンデバー帰還後、NASAはカレーライスを宇宙食の標準メニューに採用したという。この一連の流れには、偶然では片づけられない運命のようなものを感じる。
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【この辞典の書籍版説明】
「雑学大全2」東京雑学研究会 |
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浜の真砂は尽きるとも,世に雑学の種は尽きまじ。新たな1000項目で帰ってきた,知的好奇心をそそる雑学の集大成第2弾。 |
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