富士山①
【東京雑学研究会編】
【雑学大全】 地理 > 場所
標高三七七六メートルと、日本一の高さを誇る富士山は、その美しいシルエットもあいまって、日本のシンボルにふさわしい存在である。
ところが、日本アルプスなどに見られる、コマクサ、クロユリ、コケモモをはじめとする高山植物は、富士山では見られないのである。登山ファンなら、少し寂しく思うところだが、一体、どうしてなのだろう。
これは、富士山の成り立ちに原因がある。富士山は、一七〇七(宝永四)年の大噴火まで、何度も爆発を繰り返してきた比較的新しい火山である。
高山植物は、氷河期の植物の生き残りという要素が強い。低温、強風、養分が少ないなどの厳しい条件で育つ植物なのだが、その反面、こういった環境でなくては育ちにくく、ほかの植物との競争力が弱いのである。
つまり、高山植物とは、氷河期には広く低地にもあった植物が、地球が暖かくなるにつれて広がってきた暖地性植物によって高地に追いやられたものなのである。富士山の噴火がおさまった頃からでは、高山植物の定着にはとても間に合わない。
しかも、富士山は、単独でそびえる独立峰である。日本アルプスのように山脈が連なっているなら、近くの山から種子が風に乗って運ばれてくることもあるが、富士山の場合は、比較的近くにある赤石山脈でさえも、遠すぎて種子が届かない。
さらに、富士山は、近年まで噴火があったため、地表が多孔質の溶岩や、火山礫や砂におおわれている。このような土壌は、水分を保持する力が少ないので、チングルマやミズゴケといった、湿性高山植物も生えにくい。
富士山の中腹以高に見られるのは、オンタデ、フジアザミなどの、砂礫地でも育成でき、種子の散布範囲の広い植物だけである。
富士山で多彩な高山植物が見られるようになるまでは、気の遠くなるような長い歳月が必要なのである。
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【この辞典の書籍版説明】
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