炭坑節
【東京雑学研究会編】
【雑学大全】 趣味 > 音楽
「月が~出た出た~月が出た~」
このフレーズを聞けば、たいていの日本人なら、それが「炭坑節」だとすぐにわかるだろうし、その後を続けて歌える人も多いはずで、中には振り付けだって完璧という人もいるだろう。なにしろ「炭坑節」は日本で最も有名な盆踊りの音頭といっても過言ではないのである。
しかし、よく考えてみれば、福岡の三池炭鉱というごく一部の土地の民謡にすぎない歌が、ここまで全国区となり、ここまで全国の盆踊りの主役級に踊り出たというのも不思議な話。しかもその人気は、戦後間もないうちに全国区になっていたというのである。
実は、この人気のきっかけを作ったのは、レコード会社でもなく、三池炭鉱で働いていた人々でもなく、GHQなのである。
戦後、日本の復興に欠かせなかったのは石炭エネルギーである。そこでGHQと日本政府は石炭増産政策を打ち出したのだが、その際、治安を維持するために、三池や筑豊といった炭鉱にアメリカ兵を駐屯させた。
このとき、三池炭鉱に駐屯したアメリカ兵たちが「炭坑節」を聞いて大いに気に入り、覚えて歌いだしたのである。これに注目したのがNHKで、その様子をラジオ番組「炭鉱へ送る夕」で紹介したところ、とても評判が良く、「炭坑節」は人気沸騰。その後、レコード会社がレコードを発売したところ、レコードの生産が間に合わないほどだった。
ちなみに、「炭坑節」の歌詞に出てくる煙突は明治後期に三井田川炭鉱に作られたボイラー用煙突のことで、この歌詞は、その巨大さに驚いた地元の人たちの気持ちを歌ったもの。作者は地元の小学校の音楽教師で、一九一〇(明治四三)年に作られたものである。
今もアメリカの小学校の教科書には、「炭坑節」が日本の代表的な民謡として紹介されている。GHQによって広められた日本の盆踊りの名曲は、現代のアメリカの子どもたちにまで紹介され続けているのだ。
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