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タクシー
【東京雑学研究会編】

雑学大全生活 > 乗り物

人間の脳とは与えられた環境によって、どんどん化するものなのである。次に紹介するエピソードは、それを証明するかのようなもの。
イギリスの神経学者エレノア・マグワイア博士が二〇〇〇年に、アメリカ国立科学アカデミーで発表した論文によれば、ロンドンのタクシー運転手は一般の人より脳の海馬という部分が大きくなっているというのである。しかも、ベテランになればなるほど、そこが大きいというのだ。つまり、タクシー運転手は何らかの刺激によって、脳の神経細胞が発達し大きくなっていたのだ。
脳の海馬という部分は記憶を支配する役割を持っている。ではなぜ、タクシー運転手がそうなったのだろうか。
ロンドンではタクシーの運転手は、すべて個人営業である。運転手になりたいと志望する人は、専門の養成学校で教育を受けるのだが、その教育の中心はロンドンの地図を頭にたたき込むことなのであるそして、この養成学校の試験では、道路状況をしっかり把握しているかどうかテストする。つまり、ロンドンではタクシー運転手は市内の地理の専門家等しいわけである。客に道を聞くなど言語道断。病院や美術館の公共施設の場所はもちろん、道路状況からどこを走ればいちばん最短になるかまで、道について詳しくなければやっていけない。
専門的に受けた教育もさることながら、実際に道を走りながら、彼らはどんどんそれを記憶し、蓄積していくのであるだから、海馬が発達し、脳が大きくなったのだ。実験では、乗車歴三〇年というベテラン運転手になると、海馬の容積が三%もアップしていたということである
大きくなった脳は、いわば、彼らのプロとしての勲章のようなものだ。人間の可能性とは本当にすごいものである。歳を取れば記憶力は落ちると信じられてきたが、ロンドンの運転手の脳の話はそういった常識をくつがえす、希望の光のような実験結果なのである


東京書籍
「雑学大全」
JLogosID : 14820744


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編集: 東京雑学研究会
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発売日: 2004年8月
ISBN: 978-4487799473