性転換
【東京雑学研究会編】
【雑学大全】 ヒトの不思議 > 男と女
今年は雄だが、翌年には雌として生殖活動を行うのが、ワニトカゲギス目の深海魚、ヨコエソである。
この魚は、太平洋北西部の亜熱帯から亜寒帯域の外洋に生息している。最大体長は一二センチメートルほどで、体は後方にいくほど細長くなっている。鋭い歯を備えた大きな口が、頭部の五分の四をも占めており、見た目は獰猛な印象を与える。
ヨコエソは、生まれてから一年ほどで、六~七センチメートルの大きさに成長するが、この時点では、すべてが雄である。それも、雄として立派に成熟しており、交尾期になると、雌が産卵した卵の上に精子をかけて、交配することができる。
ところが、この雄たちは、翌年になって体長が九センチを超えると、全員が性転換して雌になるのである。交尾期には卵を産み、前年に生まれた若い雄たちが、それに精子をかける。
つまり、ヨコエソの交配は、すべてが姉さん女房と年若い夫という組み合わせで行われている。しかも、その女房たちの全員が、かつては雄だった過去を持っているというわけだ。
実は、性転換する魚類はヨコエソばかりではない。ヨコエソとは逆に、最初は雌として産卵し、成長すると雄に変わる種もある。なぜ性転換するのか、性転換する種となる条件は何なのか、はっきりとはわかっていない。しかし、いずれにせよ、できるだけ多くの子孫を産み出すためのシステムであろうと思われる。
ヨコエソは、孵化したばかりの稚魚の頃には、水深三〇~二〇〇メートルあたりに生息しているが、成長するにつれて、生息深度が水深三〇〇~一〇〇〇メートルにもなる。エサとするのは、オキアミ類のような小型の甲殻類なので、回遊しない深海での浮遊生活では、食料が不足しがちである。
そこで、種の絶滅を防ぐため、雌は雌として、できるだけたくさん産卵し、雄は雄として、ハーレムの王のごとく、たくさんの卵に精子をかける生態をとっているのではないかと考えられている。
data-ad-slot値が不明なので広告を表示できません。
【関連コンテンツ】
広告を表示できません。
【この辞典の書籍版説明】
「雑学大全」東京雑学研究会 |
|
“働きバチは1日6時間しか働かない”,“下手な医者をなぜ「ヤブ」と呼ぶのか?”,“『浦島太郎』のカメはオスかメスか?”……のような知的好奇心そそる雑学の集大成。なんと全1000項目!! |
|
出版社:
雑学大全[link] |