ゴキブリ
【東京雑学研究会編】
【雑学大全】 生物の不思議 > 昆虫
どこにでも出没しては、女性に悲鳴を上げさせている昆虫がゴキブリである。衛生上の理由はもちろん、その脂ぎった姿や素早い動き、殺虫剤をものともしないしぶとさなども、嫌われる要因であろう。
しぶといのも当たり前で、ゴキブリは、はるか太古の昔から、現在とほとんど変わりのない姿で繁栄していた生物である。約三億年前の古生代石炭紀の化石には、ゴキブリがやたらとたくさん含まれており、石炭紀を「ゴキブリの世紀」と呼ぶ人もいるほどだ。石炭紀は温暖な時代であり、高温多湿を好むゴキブリにとって、繁殖しやすい環境だったと考えられる。
ところで、ゴキブリは本来熱帯に生息する昆虫である。ゴキブリには多くの種類がいるが、そのほとんどは現在でも森林の落ち葉の下などで、目立たないまま生息しているにすぎない。
しかし、数種のゴキブリは、温帯である日本や欧米をはじめ、ほとんど世界中に分布し、人間と同居している。実はこれ、人間が手助けしてしまった結果なのである。
もちろん、太古から生きてきた生命力の強い昆虫であるから、陸路を歩いて、長い時間をかけて移動したゴキブリもいただろう。しかし、ゴキブリが飛躍的に勢力を広げたのは、一六世紀の大航海時代のことだった。
この時代、ヨーロッパ人は七つの海を越えて、世界中に進出した。立ち寄る港町では、大量の荷物の積み降ろしをするが、このとき、ゴキブリも船の荷物に紛れて乗船したのだ。そして、海を渡っては、人間とともにまた別の土地に上陸し、港町から内陸へと広がっていったと考えられる。
大人数が移動する戦争も、ゴキブリにとってはチャンスである。一八世紀の七年戦争、二〇世紀の太平洋戦争の後も、ゴキブリは勢力範囲を広げている。
しかも、人間の住宅事情がよくなり、四季を通じて暖かい空間がふんだんにある現代は、ゴキブリにとっても、まことに暮らしやすい時代である。昨今では、飛行機の荷物に紛れて、空を飛ぶゴキブリも珍しくない。
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【この辞典の書籍版説明】
「雑学大全」東京雑学研究会 |
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