現代は「人生二毛作」。今度は何を刈り取ろうか?
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【60歳からの人生を愉しむ心理学】 第6章 老いたときに後悔しない生 >
マズローという心理学者が提唱した欲求五段階説では、人間の一番高度な欲求段階は「自己実現欲求」とされています。
第一段階は「生理的欲求」。お腹がすいた、眠いなどの欲求で、生物として生きるために必要な欲求です。
低次の欲求が満たされると次の欲求が芽生えるとされていて、第二段階は「安全の欲求」。つまり生理的欲求が満たされると、人間は自分の身を安全にしようとするわけです。食べ物が得られなければ身を危険にさらしても食べ物を得ようとしますが、生理的欲求が満たされれば安全を確保しようとするでしょう。
第三段階は「所属と愛の欲求」。第四段階が「承認の欲求」。どちらも心の問題になってきます。他人に受け入れられ、愛され、認められることを求めます。しかし、第三、第四の欲求が満たされても、そこにはまだ満たされないものが残る。
それが第五段階の「自己実現欲求」です。
これは簡単に言えば「本当に好きなことをし、自分の存在感や達成感が実感できる状態」というようなことですが、そう簡単にはつかめません。非常に高度な欲求です。
しかし、現代の日本では、高度な欲求に目覚める人も多いのではないでしょうか。以前に比べれば世の中は安全になっていると言えます。戦争中にはみなが飢えて、第一段階の欲求も満たされませんでした。もちろん、第二の安全の欲求も危険にさらされていたのです。
今は、多くの人が第一、第二の欲求は満たされているでしょう。そして人生の時間が以前に比べて長くなっています。生きる時間がたっぷりある。六〇歳で仕事をリタイアして八〇歳まで生きるとしたら、二〇年もあります。この長い時間をどう過ごすのか。これは人類初挑戦の事態と言えます。
私はこれを「人生二毛作」と呼んでいます。リタイアしたあと、もうひとつ新しい人生を生きる。二〇年は「余生」にしては長過ぎます。我々は、幸か不幸か、高度な課題に取り組む時間を与えられている。その時間を幸にできるか不幸になるかは自分次第と言えるのです。
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【この辞典の書籍版説明】
「60歳からの人生を愉しむ心理学」渋谷昌三(目白大学教授) |
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多くの人が60歳からの「人生の後半戦」「定年後」に対して、ネガティブなイメージを抱きがちです。本書では「老い」に無理に抵抗することなく、「豊かに」「軽やかに」「上手に」愉しみながら年を重ねていくコツを心理学的なアプローチを中心に紹介します。 |
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60歳からの人生を愉しむ心理学[link] |