木橋①
【きばし】
【道と路がわかる事典】 6章 橋とトンネルの雑学 >
今でこそ木橋を見かけることはあまりないが、かつてはほとんどが木橋だった。山間部ではつるで造った吊橋もあったが、江戸時代までは木橋しかなかったといってよい。だが、木橋は強度的にも劣り、寿命も短い。川が氾濫すればたちまち流される運命にあった。
やがてわが国に車が走るようになると、木橋は次々に姿を消し、鋼橋や鉄筋コンクリート橋に生まれ変わった。ところが、現在でも立派に機能している木橋がある。江戸時代、東海道最大の難所として知られた大井川。その大井川に、明治一二年に架橋された蓬莱橋である。通行料は五〇円とある。
江戸時代、大井川には江戸防衛の目的から、架橋も渡船も許されなかった。川を渡るには、川越人足を頼むしかなかった。水位によって値段も異なる。ちなみに、腰までの水位では、川越人足の肩車で渡るのに六八文(現在の約一〇〇〇円)とられたというから、それに比べると五〇円は安い。
ところが、現在では地元の人で蓬莱橋を渡る人はほとんどいない。というのも、すぐ川下に鉄筋コンクリート製の新しい橋ができたからだ。それまで通学路として利用していた高校生も、農家の人たちも、新しい橋を利用するようになってしまったのである。
だが、地元の人たちに代わって、観光客がやって来るようになった。というのは、全長八九七・四mというこの木橋、平成九年に「世界最長の木造歩道橋」として、ギネス入りを果たしたからだ。橋脚は安全面を考えて鉄筋コンクリート製になっているが、渡し板はすべて木製だ。歩くたびに発するギシギシときしむ音が、何とも懐かしいという人もいる。「八九七・四mの長い木橋」にかけて「厄なしの長生き橋」というんだそうだ。
data-ad-slot値が不明なので広告を表示できません。
【関連コンテンツ】
広告を表示できません。
【この辞典の書籍版説明】
「道と路がわかる事典」浅井 建爾 |
|
道を切り口に日本を旅する楽しみに出会う本。身の回りの生活道路の不思議から、古道の歴史、国道や高速道路、橋やトンネル、乗り物まで道と路に関する知識が満載。 |
|
出版社:
道と路がわかる事典[link] |