歳時記
【さいじき】
【暦の雑学事典】 5章 季語と年中行事の雑学 > 歳時記
◆日本人の季節感こそ先祖伝来の固有暦
花鳥風月、雪月花を愛する日本人は、季節推移に敏感である。日本人の季節感こそ先祖伝来の固有暦である。昼夜や四季の周期にあわせることが健康の基本であるから、昨今の俳句ブームは現代のエコロジー志向や健康志向にもマッチしている。
俳句の季語を季節ごとに分類し、例句とともに解説をつけた書を『歳時記』という。これは正確には俳諧歳時記であって、もともとは宮廷で年中行事や有職故実(儀式や法令、服飾などに関する昔の規則・習慣)を記した書を歳時記といった。
よく知られるように俳句は連歌の発句(第一句)が独立したものである。
連歌は複数の作者の合作による日本独特の詩形式だが、約束事が多く純粋芸術の道を進みはじめるうちに次第に堅苦しくなってきた。そこで自由な詩風を求めて、俳諧連歌(俳諧は「おどけ」「たわむれ」という意味)が室町時代末期頃からさかんになった。芭蕉はこうした俳諧連歌師の宗匠であった。
連歌の約束事を簡素化したものに俳諧の式目書がある。連歌の発句には季節を読み込むことが原則だった。そこで江戸時代には俳諧の式目書から季節の言葉だけを抜粋した季寄せと呼ばれるものがつくられた。今日の俳句の歳時記はこの季寄せがルーツといわれる。
◆歴史や古典の勉強に歳時記は格好の教材
俳句の季語にもなっている和風月名、中国における異称などを次に示す。旧暦(太陰太陽暦)や昔の年中行事の知識など役に立たないなどと考えるのは大間違いである。昔の歳時記は年中行事表であり季節暦であった。日本史や古典文学の学習のコツは暦にあり、歳時記は格好の教材なのである。
<暦月:和風月名:中国の異称>
○春
正月:睦月(むつき):三春・初春(孟春)
二月:如月(きさらぎ):三春・仲春
三月:弥生(やよい):三春・晩春(季春)
○夏
四月:卯月(うづき):三夏・初夏(孟夏)
五月:五月・皐月(さつき):三夏・仲夏
六月:水無月(みなづき):三夏・晩夏(季夏)
○秋
七月:文月(ふみづき・ふづき):三秋・初秋(孟秋)
八月:葉月(はづき):三秋・仲秋
九月:長月(ながつき):三秋・晩秋(季秋)
○冬
一〇月:神無月(かんなづき):三冬・初冬(孟冬)
一一月:霜月(しもつき):三冬・仲冬
一二月:師走(しわす):三冬・晩冬(季冬)
data-ad-slot値が不明なので広告を表示できません。
【関連コンテンツ】
広告を表示できません。
【この辞典の書籍版説明】
「暦の雑学事典」吉岡 安之 |
|
-知っているとちょっと楽しい知識を満載!ミレニアムの意外な秘密がわかる。暦の歴史をたどり、ルーツを探る。いまに生きる旧暦の数々がわかる。さまざまな時計の歴史と科学を紹介。身近な暦の話題から歳時記まで暦の蘊蓄が盛りだくさん。 |
|
出版社:
暦の雑学事典[link] |