畳①
【東京雑学研究会編】
【雑学大全】 生活 > モノ
礼儀作法に厳格なお年寄りは、子どもが畳のへりを踏むと「そこを踏んではだめですよ」とたしなめたというけれど、どうして畳のへりを踏んではいけないのだろうか?
日本人が畳を使い始めたのは奈良時代から。「畳」という名前は、もともと畳は使わないときはたたむものだったからつけられたものだ。
当時の畳一畳は人間一人の最小限度の生活空間の意味があり、中には家紋を折り込んだものもあったのだ。だから、畳のへりは国境のように重要なものだから踏んではいけない、というタブーが生まれた。
同じことが「敷居を踏んではいけない」とうタブーにも現れている。敷居は部屋と部屋、あるいは家の中と外を仕切る神聖な境界線だから、めったなことでは踏んではいけないというわけだ。特に訪問者にとっては他人の領域に入る関門なのだから、いたずらに踏むのは大変に失礼にあたるとされるのだ。
とはいっても、畳のへりを踏んではいけない訳に関しては、おもしろい説がいろいろとある。
一つは武家作法の名残という説。
武家の床下には忍者が潜入することも多く、畳のへりを踏むと、そこが標的になって、床下から刀や槍で刺される危険性があった、というもの。確かにそういうこともあったかもしれないが、普通の家や太平の世にそうそう忍者が床下に潜んでいることもないだろうから、親が子どもに躾をするための「お話」くらいに聞いた方がいいかもしれない。
また、現在は畳の表面はほとんどまっ平らだが、昔はへりのところに小さな段差があった。そのため下を見ないで歩いたり、お盆などを持って歩くときにへりを踏むと、つまづいてしまう危険があった。つまり、畳のへりを踏まないように、というのは普段から畳のへりにつまづいて転ばないように、という生活上の知恵だったという説もある。
また東北地方では、畳のへりは布でできていて、ほかの部分に比べて傷みやすいため、畳を長もちさせるために「畳のへりを踏んではいけない」という躾が子どもに対してされている地方もある。
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