武田信玄
【東京雑学研究会編】
【雑学大全】 ヒトの不思議 > 人物
自分だけの空間で、ほっと一息。「誰にも邪魔されずに落ち着けるし、あの狭さがちょうどいいんだ」と、トイレでくつろぐ人は、案外多いものだ。
戦国武将の武田信玄も、トイレにこもるのが好きだった。とはいっても、彼のトイレは狭いどころか豪壮なものである。
広さはなんと六畳で、きっちりと畳が敷き詰められていた。しかも、用を足した後は、風呂の残り水を流すという、当時としては珍しい水洗式だった。トイレにも、完全主義で謹厳な信玄の性格がうかがえる。
そればかりではない。信玄は、朝、昼、晩の三回も、トイレに置いた香炉で沈香を焚かせていた。香が絶えることがないように、二人の当番をつけておいたというから、単なる匂い消しの範疇を越え、香りを楽しんでいたと考えられる。
また、信玄はトイレの中で策略を練っていたと伝えられている。
あえて城を築かず、甲斐から信濃、飛騨、美濃までを領有した信玄は、稀代の策謀家として知られていた。
駿河の今川氏、相模の後北条氏と姻戚関係を結んで同盟しながら、時世を見ては同盟を解消して攻め滅ぼそうとする。そんな容赦のない策謀も、いい香りのするトイレの中で練られたのだろう。
芸術家や科学者は、トイレでインスピレーションを得て、傑作をものにしたり、大発見のヒントをつかんだりするという。信玄も、そんな一人だったのかもしれない。
信玄は、若くして自分の父親を追放して当主となり、長じては息子を反逆罪のかどで刑死させている。肉親でさえ信用せず、生涯にわたって血で血を洗う戦いを繰り広げた孤独な戦国武将が、さらに孤独になれる場所が、トイレだった。
彼は、トイレにこもっていても、心からくつろぐことはなかったかもしれない。
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【この辞典の書籍版説明】
「雑学大全」東京雑学研究会 |
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