葬式②
【東京雑学研究会編】
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亡くなった人の枕元には、ご飯を茶碗に山盛りにし、そこにお箸を突き立てたものを置く。これは、仏教で「枕飯」または「一膳飯」といい、死者だけに供えられる習慣である。
ご飯を高々と盛り上げ、そこにお箸を突き立てるのは、ふだんの食事では決して見られない光景である。
子どもの頃、ご飯にお箸を突っ込んだまま放っておいたりすると、年配の人に「それは死んだ人のご飯よ」「縁起でもない、行儀が悪い」と叱られた記憶はないだろうか。
この習慣は、死者は息を引き取ると、すぐに善光寺などの霊山参りに出かけるので、道中の弁当として持たせてやるためだといわれている。
また、ご飯の魅力で、死者を呼び戻したいという気持ちの現れだという説もある。
ほかにも、ご飯を高々と盛り上げるのは、昔の身分の高い人の日常の食事の盛りつけであり、死者のためにそれを模したという説もある。
いずれの理由にせよ、人が亡くなったら、ぐずぐずしていないで、ただちに用意しなくてはならない。
宗派や地方によって、さまざまなやり方があり、浄土真宗では不要とされているが、そのほかの宗派では、小机に白い布を敷き、死者がふだん使っていた愛用の茶碗にご飯を高々と盛り上げ、そこにお箸を二本、垂直に突き立てるのが一般的である。
残された者の食事とは別に、玄米を死者の分だけ取り分け、家の外にあるかまどで炊くのが正式とされている。
お箸を突き立てるのも、これは死者のためだけの食物であり、残された者が食べたりしないようにとの意味だという。
野辺送りの際は、葬式を執り行う施主の妻がこれを持って棺に従い、棺とともに埋めることもある。
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【この辞典の書籍版説明】
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