蜘蛛と迷信
【東京雑学研究会編】
【雑学大全】 生物の不思議 > 昆虫
怪異な姿で家の片隅をチョロチョロ歩いていたり、庭に大きなネットを張っては逆さにぶら下がり、エサが引っかかるのを待ち構えている蜘蛛。ある種のものには毒もある。なんとなくユーモアがあり、なんとなく不気味なこの小動物に、人間は昔からさまざまな興味ある反応を示してきた。
最も注目すべきは、「朝蜘蛛と夜蜘蛛への迷信」であろう。同じ昆虫に対して、朝と夜とでこれほど違った好悪の感情を抱き、異なる対処の仕方を求める迷信もめずらしいのではないだろうか。
朝の蜘蛛を吉兆とみなし、夜の蜘蛛を凶兆とみなすのは、日本全国で共通しているようだ。例えば、朝の蜘蛛は、「客が来る」「良いことがある」「縁起が良い」「殺すな」。夜の蜘蛛は、「泥棒が来る」「縁起が悪い」「殺せ」「親に似ていても、親と思っても殺せ」。なんという違いであろう。
地方によっては、午前中に現れた蜘蛛を神仏に供えたり、身につけたりする風習もあるようだ。懐、袂、財布に入れるというのだ。箪笥に入れる地方もある。一方、夜の蜘蛛は、「あした来い」と言って、追い出してしまう地方も多いようだ。
このように人と蜘蛛との関わり方は、多彩で興味深い。そのような記録は、多くのところに残されている。例えば、『日本書紀』、説話文学、謡曲、狂言、江戸時代の随筆、雑俳など。ほかには、昔話、伝説、口承文芸の中にも蜘蛛は顔を出している。「蜘蛛の怪」などは見逃せない。
鹿児島県加治木町では、旧暦五月五日に「蜘蛛合戦」なる民俗行事が行われる。これも蜘蛛と人間との深い関わりの一例である。伝承をたどっていけば、人間がこの小さな虫に寄せた信仰がうかがえると言われている。
近年、そのような信仰は希薄になったが、それでも身近なところに残る蜘蛛への俗信は、今も人々の注意をひきつけている。
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「雑学大全」東京雑学研究会 |
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