キリスト①
【東京雑学研究会編】
【雑学大全】 社会 > 宗教
イエス・キリストは、キリストという苗字のイエスという名前の人というのが正しいように感じる。でも、実はキリストというのは苗字ではなく称号、つまり肩書きなのである。
イエス・キリストというのは、ヘブライ語をギリシア語に翻訳したもので、本来のヘブライ語に戻すと「ヨシュア・メシア」となる。ヘブライ語で「ヨシュア」とは「ヤハウェは救いである。主は救って下さる」という意味で、イスラエルで最も広く用いられた名前。特に長男につける名前だったようで、日本ならさしずめ太郎や一郎といったところだろうか。
また、ヘブライ語の「メシア」とは、「油を注がれた者」という意味。イスラエルでは王の即位や祭司、預言者が就任するときに、油を頭に注ぐ儀式を行っており、ここから王や祭司、預言者が「メシア」と呼ばれるようになり、やがて、ダビデのような王が再び現れることを待望するようになると、「メシア」という言葉は救済者を指す称号になっていったのだ。イエスは当時の人々にとってメシア到来の希望を抱かせる人物だったため、彼はメシアと呼ばれるようになり、「ヨシュア・メシア」となったのだ。
つまり、「イエス・キリスト」というのは、キリスト(=救世主)という肩書きを持ったイエス様という意味。この呼び名の中には苗字など含まれていないのである。
新約聖書が誕生してから二〇〇〇年あまり経ったが、新約聖書以降は、イエス以外にキリストという称号で呼ばれる人物はいない。だから、キリストは称号だが、イエスこそキリスト、キリストといえばイエスとなり、まるで固有名詞のように用いられるようになっただけなのである。
英語では「ジーザス・クライスト」と呼ばれているが、このクライストも「メシア」が翻訳され、自国流の読み方をして生まれたものである。
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