箱根山
【東京雑学研究会編】
【雑学大全】 地理 > 場所
東京の新宿区戸山町にある早稲田大学文学部近くの戸山公園に「箱根山」と名付けられた小山がある。もともと「箱根山」とは伊豆半島の根元にあり、山梨県、神奈川県、静岡県にまたがる三重式の火山だ。「箱根の山は天下の嶮」と歌に歌われるほど、旅人にとっての難所として有名。最近、箱根山は新年の大学駅伝でも知られるようになった。
その箱根山とは遠く離れた戸山公園にある箱根山は、標高四四・六メートルと東京二三区内では最高峰とはいえ、難所とはほど遠い、人工的に造られた小さな築山だ。箱根山がある新宿区の戸山町一帯は、江戸時代には戸山荘と名づけられた尾張藩徳川家の下屋敷があり、一三万六〇〇〇坪(約四五ヘクタール)の広大な庭園が造られていた。
二代目藩主、光友の一六六九(寛文九)年頃から造営され始めたのだが、近世の大名庭園で、戸山荘ほど大きな規模のものはほかに例がない。
この庭園全体は、東海道五十三次の縮景で知られていたもので、宿場町の一つ小田原宿が、一つ一つの宿まで元とそっくりに再現されていたといわれている。この庭園内にある「箱根山」も元来は「玉円峰」と名づけられていた。しかし庭園内でも、小田原宿を登り口とする山なので「箱根山」と呼ぶようになったのだろう。
古の戸山荘には宿場町のほかに、神社・堂塔三八か所、御亭・御茶屋一〇七か所があり、それらの中には奇抜な趣向のものが多く、戸山焼きという名の陶器も作られたと伝えられている。
宿の入り口には「人馬の滞り、あってもなくても構いなし」と、現実の宿場町ではありえないような看板が掲げられていた。
新宿の戸山荘は幕末に地震、火災、台風などで荒廃し、明治時代に軍用地となってしまった。現在、戸山荘は跡形もないが、残された小さな築山に、箱根山の名称が残されている。
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