ヱビスビール
【東京雑学研究会編】
【雑学大全】 社会 > 企業
特定の商品が、駅名や地名になることは大変珍しい。東京都渋谷区の「恵比寿」はその珍しいケースの一つである。
一八八七(明治二〇)年、近在の実業家らが集まり、現在の東京都渋谷区に「日本麦酒醸造会社」が設立された。現在の「サッポロビール」の前身である。二年後の一八八九(明治二二)年、現在「恵比寿ガーデンプレイス」のある地にレンガ造りのビール醸造場(工場)が誕生。ドイツから醸造技師を招き、翌年「恵比寿ビール(のちヱビスビールと改名)」を発売する。すぐさま東京のビールとして、大変な人気を博した。
このとき、「恵比寿ビール」という商品が、のちに「恵比寿」という地名を作ってしまうことなど、誰が想像しただろうか。当時の正式な地名は、東京府荏原郡目黒村三田。この地名から察せられるように、当時の「恵比寿」は民家も乏しい農村地帯であった。
そのビールの需要が増え、ビールの出荷のための荷扱い駅が必要となり、一九〇一(明治三四)年、工場の貨物駅が「恵比寿停車場(現在のJR山手線「恵比寿駅」)」と名づけられる。そして一九二八(昭和三)年、ヱビスビール工場付近一帯の地名も「恵比寿」となる。つまり、ビールの名前が、街の名前に採用されたのだ。
戦中に販売を中止した「ヱビスビール」は一九七一(昭和四六)年、二八年ぶりに復活し、今日ではブランドとして広く知れわたっている。これらの歴史は、工場跡地に開発された「恵比寿ガーデンプレイス」の一角につくられた「恵比寿麦酒記念館」で見ることができる。
余談だが、「恵比寿ビール」が誕生する以前の一八七二(明治五)年には「渋谷ビール」があった。しかし、「しぶや」でなく「しぶたに」と呼ばれ、誕生の地は大阪。一〇年後には廃業しているが、仮に発売されていたとすれば「恵比寿」と「渋谷」が競合したことになる。
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