イエスとブッダ
【東京雑学研究会編】
【雑学大全】 社会 > 宗教
福音書に書かれているイエス・キリストの生涯と、語り伝えられているブッダことゴータマ・シッダールタの物語には非常によく似たところがたくさんある、と堀堅士氏が著書『仏教とキリスト教』で述べている。
何よりも似ているのが誕生のエピソードだ。
イエスもブッダも母親の処女懐胎によって生まれている。
処女懐胎とは、性交渉の経験のない女性が妊娠し、普通の人とは異なった能力のある男の子を出産すること。古代ギリシア・ローマやオリエントを始め、世界各地の英雄神話や王の誕生物語に見られる。妊娠の手段として呪術や宗教儀礼が登場することが多く、処女崇拝や処女の神聖視がこのような伝承のもとになっているといわれている。
さて、ブッダの母・マーヤーは牙が九本ある白い象が天から降りてきた夢を見て身ごもった。イエスの母・マリアには婚約者のヨセフがいたが、結婚する前に天使のお告げを聞いて、聖霊によって妊娠した。
また、マーヤーは旅先でブッダを産み、マリアもベツレヘムに逃亡していたときにイエスを出産している。ブッダが生まれたときの状況は「十方世界ことごとく大いに明るく」「諸天は歌い、太子の徳を賞賛した」と伝えられ、イエスの誕生のときはマタイ、ルカの福音書に「神の栄光で一面が明るくなり、天使たちの賛美歌が聞こえてきた」と書かれ、新約聖書の冒頭の「神の子」出現物語の重要なファクターとなっている。
また、この二人が信仰に目覚める様子もよく似ている。
洗礼を受けたイエスが荒れ野で悪魔の誘惑を受けるエピソードは、ブッダがこれも悪魔の誘惑を克服して悟りを開く状況ととてもよく似ているし、誘惑を受け続けた期間も四〇日と四九日ときわめて近い。また、このときの年齢はともに三〇歳前後、洗礼を受ける場所もともに川のそばだ。
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