アリ①
【東京雑学研究会編】
【雑学大全】 生物の不思議 > 昆虫
アリは、よく行列を作って歩いている。いかにも律義な働き者らしい行動だが、わざわざ行列を作る必要はあるのだろうか? 目的地に着くのが、かえって遅くなることもあるのではないだろうか。
行列を作る習性は、アリの出すフェロモンによるものである。
アリやミツバチなど、集団生活を営む昆虫は、体内からさまざまなフェロモンを発して、コミュニケーションの手段としている。
ことにアリは「歩く外分泌腺」のようなもので、一種あたり一〇~二〇ものフェロモンを使っている。
もちろん、その一つ一つに意味がある。ほかの多くの生物も発する性フェロモンはもとより、仲間を誘ったり、集合をかけたり、警報を発したり、お互いを同じ巣の仲間だと認識したり、違う巣のアリだと区別したり、幼虫の成長を確認したりと、まさにフェロモンは、アリの言語なのである。
中でも、エサの収集に欠かせないのが、尾節腺から出す「道しるべフェロモン」である。一匹のアリが、エサを発見すると、「この先にエサがあるぞ」という意味を発するフェロモンを地面に撒き散らして歩く。
しかも、これは同じ巣のアリたちだけに通じる合図であるから、ほかの巣のアリたちとエサの奪い合いになる心配もない。仲間たちは行列を作って一本線の上を進み、迷うことなくエサのところへたどり着けるというわけである。
それだけではない。道しるべフェロモンを出しても、地面に吸収されてしまっては何もならない。そこで、アリは、まず地面をコーティングするような物質を出し、その上にフェロモンで線を引くという、見事なテクニックを発揮しているのである。
仲間とうまくやっていき、集団を盛り立てるためには、コミュニケーションが欠かせない。人間も、アリを見習わなくてはならないようだ。
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【この辞典の書籍版説明】
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