ドライミスト
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【雑学科学読本 身のまわりのモノの技術vol.2】 インフラに見るモノの技術 >
日本では江戸時代から、街の気温を下げる「打ち水」の風習があった。江戸はたいへん埃(ほこり)っぽい町だったというが、その埃を抑えるために水が撒(ま)かれた。それが気温を下げる効果もあることに気づき、打ち水として定着したらしい。現代でも、「打ち水大作戦」などといって、都市部で打ち水のイベントが定着している。このように、打ち水は外気から奪う蒸発熱を利用して周囲を冷やすしくみだが、この単純なしくみを利用した冷却法が人気だ。ドライミストである。ミクロン単位の細かい水滴を噴射し、周囲の気温を2~3度下げることができる。風がある炎天下の街中では、それ以上の効果がある。普及の秘密は何といっても「屋外を効率よく冷やせる」という点にある。これまでも、屋外型の冷却装置はあったものの、冷やせるエリアが狭く、何より電気代がかさむという難点があった。節電が叫ばれている現代において、そうした屋外冷房は現実的でない。その点、「ドライミスト」は細かい霧をシューっと噴き出すだけの簡単な構造である。実にエアコンの20分の1のエネルギーで、周辺の気温を下げられる。では、ドライミストの噴出装置の構造はどのようなものなのだろう。基本は消火用のスプリンクラーと同じである。スプリンクラーのノズル(放水口)の直径を16ミクロンと小さくし、6気圧程度の高圧の水圧をかければ、そのままドライミストが実現される。16ミクロンという直径は、頭上から噴いても濡れた感じがせず、化粧落ちもしないという実験の結果だそうだ。もちろんドライミストにも欠点はある。湿度の高い曇り空の日には、いくら気温が高くても使えない。かえって湿度を高めてしまうからだ。打ち水効果で冷やす以上、それは仕方がない。近年、ドライミストは動物園、農場など、人以外の施設にも盛んに利用されている。そのシンプルさと省エネ性から、今後ますます応用の範囲が広がることが期待されている。
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【この辞典の書籍版説明】
「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術vol.2」涌井良幸・涌井貞美 |
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大好評を得た既刊『身のまわりのモノの技術』の待望の続編! 「日頃よく使っているモノ」あるいは「意識しなかったけど、じつは身近にあるモノ」などに活かされている“技術・しくみ"について、豊富な図版をまじえながらシンプルに解説する本。 モノの技術やしくみが少しでもわかると、そのモノへの愛着と興味が増し、何気なく手にしたり触れたりするモノが、より身近になります。 本書を通じて、「科学技術の結晶」たちのスゴ技を、とくと堪能してください! |
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