ゴアテック
【】
【雑学科学読本 身のまわりのモノの技術vol.2】 実用アイテムに見るモノの技術 >
防水の施されたウエアを着て、蒸れて不快な思いをしたという経験はないだろうか。「濡れない」と「蒸れない」とは相対(あいたい)する性質なのである。その矛盾(むじゅん)する性質を解決する素材が、透湿防水素材である。最初の商品名がゴアテックスと呼ばれているので、こちらの名称のほうが有名かもしれない。この素材は複数の生地を貼り合せてできているが、中の1枚に無数の微細な孔(あな)がある膜が含まれている。この孔は、空気や水蒸気を通すが、水は通さない。したがって、雨の水滴は外側から入ることはできないが、体から出た水蒸気は外に放出される。こうして「濡れずに蒸れない」という相矛盾する性質を兼ね備えた生地が生まれたのである。水と水蒸気は同じもの、と思うかもしれない。両者とも、水素原子2個と酸素原子1個が結合した水分子(H2O)からできている。しかし、分子レベルで見ると、水と水蒸気には大きな違いがある。水は水分子がクラスターと呼ばれるたくさんの集合体からできている。それに対し、水蒸気は水分子単体または数個からできている。したがって、ほどよい大きさの孔ならば、水は通さずに水蒸気を通すことは可能なのである。水分子を人に例えるなら、一人が通れる孔でも、手をつないだ多人数は通れない、ということになる。ちなみに、「水を通さず、水蒸気は通す」と「水を通さず、汗は出す」は違う。汗は水蒸気ではなく、水である。したがって、濡れた汗は排出してくれない。また、濡れたところに長時間座っていると、外の水分が水蒸気となって内側に逆流してくることがある。しくみを知らないと、素材の長所を生かせないのは、皆同じなのだ。近年、透湿防水素材が安価に生産できるようになったおかげで、応用範囲が広がっている。例えば「雨が降っても大丈夫」とうたうふとん干しカバーも、この素材を利用している。カバーで包めば、ふとんの水蒸気は外に出てくれるが、雨はしみ込まないのだ。
data-ad-slot値が不明なので広告を表示できません。
【関連コンテンツ】
広告を表示できません。
【この辞典の書籍版説明】
「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術vol.2」涌井良幸・涌井貞美 |
|
大好評を得た既刊『身のまわりのモノの技術』の待望の続編! 「日頃よく使っているモノ」あるいは「意識しなかったけど、じつは身近にあるモノ」などに活かされている“技術・しくみ"について、豊富な図版をまじえながらシンプルに解説する本。 モノの技術やしくみが少しでもわかると、そのモノへの愛着と興味が増し、何気なく手にしたり触れたりするモノが、より身近になります。 本書を通じて、「科学技術の結晶」たちのスゴ技を、とくと堪能してください! |
|
出版社:
雑学科学読本 身のまわりのモノの技術vol.2[link] |