カップ麺
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【雑学科学読本 身のまわりのモノの技術vol.2】 実用アイテムに見るモノの技術 >
1958年(昭和33)、東京タワーが完成したその年にインスタントラーメンは誕生した。それから10年余り、今度はカップ麺が誕生する。おいしく手軽にその場で食べられるため、世界中で爆発的に普及していった。カップ麺には、いくつもの不思議が詰まっている。例えば、なぜ麺が揚(あ)げられているのかというと、実はそこに、最大の発明がある。麺を揚げることで水分が飛び、保存ができるようになるのだ。また、麺のアルファ化が促進され、「お湯をかけて3分で食べられる」ようにもなる。アルファ化とは、人間が消化できるようにデンプンを転化することをいう。ところで、なぜ「3分」なのだろう。1分で食べられる麺も作れるが、当然伸びるのも早くなる。食べている間に麺が伸びてしまうのだ。しかし、長く待たされてはイライラする。その頃合いが「3分」なのである。3分には人間工学的な経験則が凝縮(ぎょうしゅく)しているのだ。では、麺はなぜ縮れているのだろうか。それは、麺をそのまま揚げると麺同士がくっつき、揚げ上がりにムラができるからだ。麺を縮れさせれば、隙間(すきま)ができて均等に揚げられる。ここで、カップ麺の容器を縦に切断してみよう。麺の下に隙間があることがわかるはずだ。また、上側の麺が密で、下側がそうでないことも見て取れる。なぜだろうか。何の工夫もせずに麺を容器に入れて3分間放置すると、中心部までお湯の熱が伝わらない。そこで、下に隙間を作って熱湯が対流しやすくしているのだ。こうして、熱い湯がまんべんなく行き渡ることになる。カップ麺は具にも工夫がある。1950年代に軍の携行食として開発された「フリーズドライ」という技術を利用している。熱処理をしないですむため、食材の風味が生かされるのだ。このように、カップ麺にはさまざまな技術が凝縮されている。そして現代、揚げない「ノンフライ麺」や、縮みのない「ストレート麺」の登場など、さらなる進化を続けている。
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【この辞典の書籍版説明】
「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術vol.2」涌井良幸・涌井貞美 |
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大好評を得た既刊『身のまわりのモノの技術』の待望の続編! 「日頃よく使っているモノ」あるいは「意識しなかったけど、じつは身近にあるモノ」などに活かされている“技術・しくみ"について、豊富な図版をまじえながらシンプルに解説する本。 モノの技術やしくみが少しでもわかると、そのモノへの愛着と興味が増し、何気なく手にしたり触れたりするモノが、より身近になります。 本書を通じて、「科学技術の結晶」たちのスゴ技を、とくと堪能してください! |
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雑学科学読本 身のまわりのモノの技術vol.2[link] |