潜水艦
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【雑学科学読本 身のまわりのモノの技術vol.2】 乗り物に見るモノの技術 >
第一次世界大戦(1914~18年)、ドイツ軍によって実用化された潜水艦(Uボート)。その戦略的な重要性は現在も増すばかりである。偵察(ていさつ)衛星から捕捉(ほそく)されにくく、情報収集や中枢(ちゅうすう)への攻撃が可能だからだ。1世紀経ったとはいえ、潜水艦の基本的なしくみは今も不変である。まず、潜水艦が浮き沈みするしくみを解説しよう。これは、海水をタンクに注入したり排出したりすることで可能となる。海水を注入すれば重くなり、艦は沈む。排水すれば艦は軽くなり、浮かび上がる。このタンクをバラストタンクと呼び、海水の排出には圧縮(あっしゅく)空気を利用する。水中において、通常の潜水艦の推進力となるのは電気モーターだ。燃焼のための空気を必要としないからである。バッテリーは、浮上中にディーゼル発電機で充電されるのが一般的だ。「スノーケルマスト」という長い管を水面に出して空気を取り入れ、ディーゼル発電機を回すこともある。潜水艦の目となるのは「ソナー」である。水中では目視は不可能なので、音で周囲を識別する。これは、目の見えないコウモリが音波を出して周囲の状況を判断するのに似ている。潜水艦の最大の特徴は忍者のような隠密性(おんみつせい)にある。浮上することは相手に位置を知られることになり、好ましくない。そこで登場したのが、原子力潜水艦だ。原子炉はタービンを回して推進力を生み、発電もできる。原子力は空気が不要であり、燃料と食糧が尽つきるまで、乗員が耐(た)えられれば何年でも潜水していられる。近年、長期間潜水し続けられる通常の潜水艦も開発されている。「AIP」と呼ばれる推進力を用いた潜水艦である。AIPは、積載(せきさい)している液体酸素と燃料を化学反応させてスターリングエンジンを加熱し、発電する。このエンジンはたいへん熱効率がいいことで知られ、原子力ほどではないが長期の潜水も可能である。日本の最新鋭潜水艦にはこれが利用されている。
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【この辞典の書籍版説明】
「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術vol.2」涌井良幸・涌井貞美 |
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