スチームアイロン
【】
【雑学科学読本 身のまわりのモノの技術vol.2】 家電に見るモノの技術 >
ティファールから大容量のスチームボイラーを装備したアイロンが発売され、「プロの仕上がりが可能になる」と人気を集めた。大量の高温高圧のスチームを連続噴射することで、アイロンの効きをよくしているのだ。日本のメーカーも、それにならって多くの機種を発売し、ちょっとしたアイロンブームを起こしている。日本でも、アイロンがけは卑弥呼(ひみこ)の時代から行なわれていたというが、アイロンをかけるとなぜシワが伸びるのだろう。その方法のしくみを調べてみよう。アイロンをかけるとシワが伸びる理由は、ナノの世界で説明される。繊維(せんい)分子の構造にまで視野を拡大しないと理解できないのである。例えば、シワができやすいことで知られる綿について考えてみよう。綿は繊維分子同士が手をつないだ「くさり」状態になっているが、そこに水分が加わると部分的にバラバラになり、再結合する。このとき、元の位置とは異なった位置で結びついてしまう。これがシワの原因である。このシワをなくすには、まず再結合を外して元に戻す必要がある。それが、スチームを用いたアイロンがけ。高温の蒸気を当てることで、ズレた分子の位置をリセットし、高温のアイロンで適正に再配置させる。こうして、元のスッキリした形が再現されるのである。ウールの場合は、多少しくみが異なる。ウールは人の髪と同様、表面がキューティクルで覆われている。これは魚の鱗(うろこ)のようなもので、水を吸うと開いてしまう。洗濯して乾燥するとパサついてしまうのはこれが原因である。そこで、蒸気をかけて熱でそのパサつきをリセットするのが、アイロンがけのしくみである。150度くらいのスチームアイロンを1センチくらい浮かせ、蒸気を当てるようにかけると、きれいに仕上がる。以上のように、アイロンがけのメカニズムはたいへん複雑だ。当たり前のモノほどしくみは難しいといわれるが、アイロンがけもその一例だろう。
data-ad-slot値が不明なので広告を表示できません。
【関連コンテンツ】
広告を表示できません。
【この辞典の書籍版説明】
「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術vol.2」涌井良幸・涌井貞美 |
|
大好評を得た既刊『身のまわりのモノの技術』の待望の続編! 「日頃よく使っているモノ」あるいは「意識しなかったけど、じつは身近にあるモノ」などに活かされている“技術・しくみ"について、豊富な図版をまじえながらシンプルに解説する本。 モノの技術やしくみが少しでもわかると、そのモノへの愛着と興味が増し、何気なく手にしたり触れたりするモノが、より身近になります。 本書を通じて、「科学技術の結晶」たちのスゴ技を、とくと堪能してください! |
|
出版社:
雑学科学読本 身のまわりのモノの技術vol.2[link] |