形態安定シャツ
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【雑学科学読本 身のまわりのモノの技術】 身近にあるモノの技術 >
そこで、現在、市販されている多くのワイシャツには形態安定という加工が施(ほどこ)されている。形態安定とは「形状記憶」「ノーアイロン」などと呼ばれる繊維(せんい)加工の総称である。この加工が施されていると、洗った後に干すだけでアイロンが不要になる。あわただしい現代人にはピッタリのシャツだ。形態安定加工のしくみを見る前に、なぜシワができるのかを調べよう。綿繊維は天然のセルロース分子が緩やかに結びついてできているが、内部には大小さまざまな隙間(すきま)がある。洗濯時には、この隙間に水がしみ込んで膨張(ぼうちょう)・変形するのだ。そのまま乾燥すると、繊維が変形状態で固定されてしまう。これがシワの原因である。シワを作らないためには、水による繊維の膨張を抑えればいい。その解決策として考え出されたのが架橋(かきょう)反応だ。繊維と繊維とがしっかり結びつくよう、分子同士に橋を架ける化学反応を利用するのだ。そうすれば、水がしみ込んでも繊維は膨張しなくなる。架橋反応には最初にホルマリンが利用された。現在では肌や環境にやさしいさまざまな物質が考え出されている。架橋反応を利用して繊維の変形を防ぐ技術は、何も綿だけに限ったことではない。ウールにも利用されている。「丸洗いできるスーツ」などがそれである。ウール繊維は表面がうろこ状になっていて、水を含むとささくれ立ち、隣の繊維ともつれ合う。これが、水洗いでウール製品が縮む原因だ。そこで、繊維を薄く樹脂で包んで架橋させる。すると、濡れても繊維はもつれ合うことがなく、乾燥すれば元の形に戻る。ちなみに、形態安定加工された衣服は「濡(ぬ)れ干(ぼ)し」が基本である。雫(しずく)がたれるくらいが理想だ。水分の重みでシワが自然に伸びるからである。
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【この辞典の書籍版説明】
「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」涌井良幸・涌井貞美 |
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身のまわりの「便利なモノ」にはすべて、「便利さの理由」があります。でも、私たちはそれをよく知らないまま、日々生活していることがほとんどではないでしょうか。本書は、家電からハイテク機器、身近な家庭用品まで、私たちが日頃よく使うモノに関する素朴な疑問を図解で解説。「モノ=科学技術の結晶」たる所以がこれでわかります |
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雑学科学読本 身のまわりのモノの技術[link] |