臓器移植コーディネーター
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脳死判定と臓器移植
●脳死とはどのような状態を意味するのでしょうか?
脳死とは、「脳が永久に働かなくなり元に戻ることができないにもかかわらず、人工呼吸器などの生命維持装置により人為的に呼吸運動が行われ、心臓は活動している状態」です。日本では、大脳と脳幹を含むすべての脳機能の停止を脳死と定義して、脳死の判定基準が決められています。心臓が先に停止してしまう心臓死とは異なるものです。
●脳死判定と臓器提供はどのように行われるのでしょうか?
わが国では1997年に施行された臓器の移植に関する法律による脳死判定基準(表1:脳死判定基準)により脳死を人の死と認め、生前の患者さん自身の意思とご家族の同意に基づき、脳死体からの臓器提供を前提として脳死判定が行われます。現在では400を超える全国の施設が臓器提供施設に指定され、それぞれ倫理委員会を設置して、定められた脳死判定医による脳死判定が滞りなく行われるようになってきています。臓器移植という特殊医療が行われるわけですから、最善の医療を尽くした後に、迅速で公正な判定が行われなくてはいけません。最近は判定基準にも少しずつ見直しがなされはじめており、小児にも脳死判定基準が適応できるよう法改正が進んでいます。
現在では、本人による臓器移植の意思表示があったことがドナーカードで示され、ご家族が同意した場合に限って判定基準に沿った脳死判定と臓器移植が行われます。この際、ご家族に一連の流れの説明や心配事の相談を受けるのがコーディネーターです。法に基づく脳死判定は6時間の間隔をあけて2回行われます。脳死が決定されるまでは、最善の医療が行われなければなりません。脳死が確認され死亡が宣告された時から、患者さんはドナーとなるわけであり、患者さんの管理は今までの主治医からドナー管理チームに交代することが望ましいと考えられます。重症の臓器不全のために移植医療を待ち望んでいる方たちに、命の贈り物をして死後役に立ちたいという意思表示をされたご本人とご家族の崇高なる善意を生かすために、臓器提供者(ドナー)管理チームは臓器をできるだけよい状態に保つ臓器保護が中心任務となります。
脳死判定および臓器摘出に関する書類は表2のようにたくさん必要です(表2:脳死判定および臓器摘出に関する書類)。今までまったく健康であったご家族が突然脳死に陥ってしまったご家族は、現実を認めたくないという気持ちとご本人の意思を生かさなければいけないという気持ちの狭間にあり、たくさんの書類にはなかなか注意が向きません。しかし主治医・看護師やコーディネーターが必ず親身になって話してくれるはずです。
できるならば脳死判定の現場の当事者にはなりたくないと誰でも思います。しかし、死後も臓器提供により役立ちたいという意思表示がドナーカードにより確認されたならば、その崇高な本人の意思を無にしないように、涙をふき勇気をもって今何をすべきかを考え実行していくことが、ご家族の務めではないかと考えます。 (工藤千秋)
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【この辞典の書籍版説明】
「標準治療」寺下 謙三 |
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約570の病気の情報 (症状、診断方法、標準的な治療方法、予後、生活上の注意など)を診療科目別に掲載している 「家庭の医学事典」です。 |
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